上肢、下肢それぞれの協調性検査の方法について

協調性検査としてはいくつかの種類を組み合わせて判断することがあります。
でも上肢、下肢の協調性検査もどれがなんなのかわかりにくいかもしれません。

そこで今回は上肢、下肢それぞれの協調性検査の方法について解説します。

上肢の協調性検査

上肢の協調性検査方法としては…

  • 鼻指鼻試験(nose-finger-nose test)
  • 指鼻試験(finger-nose test)
  • 膝打ち試験(KneePat Test)
  • 手回内・回外試験(hand pronation・supination test)
  • 運動分解(decomposition of movement)
  • Stewart-Holmes反跳現象(rebound phenomenon)
  • 線引き試験(line drawing test)
  • 書字試験

…といったものがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。

鼻指鼻試験(nose-finger-nose test)

被験者の示指を自分の鼻尖に当てさせ、その指で検者の指先と被験者の鼻尖を交互に触らせます。
このとき検者の指は被験者が肘関節を進展させなければ届かない位置に置き、毎回位置を変化させる必要があります。

示指の動き方、振戦の出現、鼻尖にきちんと指が達するかどうかで、測定障害(dysmetria)・共同運動不能(asynergia)・振戦(tremor)の有無を判定できます。

指鼻試験(finger-nose test)

これは上述した“鼻指鼻試験”と前後して行う検査です。
方法としては被験者の上肢を十分に伸展させた位置から示指で被験者の鼻尖を触らせます。
このとき肘関節部を胸壁などで固定しないように注意します。

このテストは繰り返すことにより動作が円滑になることがあるために、特に最初の1~2回を注意してみる必要があります。

膝打ち試験(KneePat Test)

被験者を座らせ、自分の膝を片側ずる手掌および手背で交互に素早く叩かせるという検査です(両側同時に行わせる方法もあります)。
この場合最初はゆっくりと、次第に速度を増してできるだけ早く行わせるのがポイントです。
正常では迅速に規則正しく行うことができ、同じ場所を叩きます。

協調運動障害がある場合は、動作はのろく不規則で、叩く場所も一定しないのが観察できます。

手回内・回外試験(hand pronation・supination test)

両上肢を伸展させ前にだし、できるだけ早く回内・回外を繰り返させます。
この検査は反復拮抗運動不能を調べる検査で、動作のスピードとリズムに注意して観察することが重要です。

また、筋緊張異常や運動麻痺があっても検査は陽性となるため注意が必要です。

運動分解(decomposition of movement)

上肢を伸展させた位置から示指で耳に触れるよう指示します。
通常では直線的な軌跡をたどって耳に到達しますが、この症状がある場合にはそれが困難になります。

Stewart-Holmes反跳現象(rebound phenomenon)

スチュアート・ホームズ反跳現象は、被験者の肘関節屈曲時に検者が最大抵抗を加えこれを急に離した時の状態をみます。
運動失調の場合、放された手が顔や胸を強く打つため、危険をさけるため顔に当たらないように検者の手でカバーするなどの配慮が必要です。

線引き試験(line drawing test)

10cm離れた平行線の間に直線を引きます。
通常なら直線の間をスムーズに線を引くことができますが、運動失調の場合は直線からはみ出す(測定過大)or届かない(測定過小)…といった症状がみられます。

書字試験

運動失調の場合、書き始めから徐々に字が拡大していく“大字症”が典型例です。
また測定障害や協同収縮不能などによって支離滅裂な文字になることも特徴です。
また、迷路性運動失調の場合、一連の文字がい方向に偏倚する“迷路性偏書”も認められます。

下肢の協調性検査

下肢における協調性検としては…

  • 足趾手指試験(Toe-Finger Test)
  • 踵膝試験(Heel-Knee Test)
  • 向こう塵叩打試験(Shin-Tapping Test)
  • Foot Pat

…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。

足趾手指試験(Toe-Finger Test)

被験者を仰臥させ、足の母趾を検者の示指につけるように命じます。
検者の示指は被験者が膝をまげて到達できるような位置におくことが必要です。
検者は示指を素早く15-45cm程度動かし、被験者に足の母趾でこれを追うように命じます。

協調運動障害がある場合はうまく追うことができないのが観察できます。

b)踵膝試験(Heel-Knee Test)

踵膝試験は仰臥位で行います。
この際、検査結果を正確なものにするためにもなるべく被験者の眼をつぶらせた方がよいようです。
方法としては、被験者の片側の踵を他側の膝につけ,またもとにもどす運動をくり返させます。
また、片側の踵を他側の膝にのせた後、さらに母趾を天井に向けるようにして,踵を向こう脛に沿って真っ直ぐに下降させ、足背に達したらもとの位置にもどさせる…という“heel-shin test”も一般的に踵膝試験に含まれています。

協調運動障害の場合、踵はうまく膝にのらず,向こう脛に沿って真っ直ぐにまた円滑に動かすことができない…というのが観察できます。

向こう脛叩打試験(Shin-Tapping Test)

上述した“腫膝試験”はその方法がやや複雑なことからも認知機能が低下しているような被験者では、検査方法の理解が不十分なことから検査として有用ではない場合があります。
その際の代替方法としてこの“向こう脛叩打試験”を行うことがあるようです。
これは片側の足を反対側の向こう脛の上、大体lOcmのところにあげ、足を十分に背屈させ足趾を天井に向くようにさせます。
そのまま踵でで反対側の向こう脛の膝から5cmぐらい下を叩かせる…という検査です。

毎秒1-2回の速度で7-8回軽く叩かせますが、協調運動障害がある場合、一定のところが叩けないという様子が観察できます。

Foot Pat

被験者の踵が丁度よく床につくよう腰かけさせます。
そして踵は床につけたまま、足首を屈伸させ足底でできるだけ速く床を叩くように命じます。
協調運動障害の場合ゆっくりしか行えない様子が観察できます。

椅子座位ではなく仰臥位で行う場合は、同じような条件で検者の手掌を叩くように命じ検査を行います。

協調性検査の判定方法やカットオフについて

上述した協調性検査の判定方法ですが、基本は正常or異常で判断します。
そのため明確なカットオフ値が定められているわけではないようです。

まとめ

今回は上肢、下肢それぞれの協調性検査について解説しました。
協調性検査を行うことで、転倒のリスクや生活動作の問題点などを抽出することができます。

しっかりと評価をすることで、クライアントの生活しやすさにつなげるようにする必要がありますね。

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