社会生活を送るための生活能力を評価する方法ですが、主に統合失調症の方にむけた評価方法の一つとして“LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)”があげられます。
今回はこのLASMIの目的や評価項目、点数やメリット、デメリットについて解説します。
LASMI(精神障害者社会生活評価尺度)とは?
精神障害者社会生活評価尺度(LASMI:life assessment scale for the mentally ill)とは、1995年に“障害者労働医療研究会精神障害部門”にて岩崎らが中心となって開発された“社会生活評価尺度”になります。
LASMIは統合失調症の対象者の社会生活能力における特性や“生活のしづらさ”に基づいて作成されているのが特徴といえます。
加えて、“精神障害者ケアガイドライン”のケアアセスメント票とも関連している点からも、重要な評価といえます。
LASMIの目的
LASMIの開発目的ですが入院(開放病棟)からデイケアや作業所、そして社会的自立(就労)までの多様な生活場面における統合失調症の対象者の社会生活能力を評価することとされています。
評価項目について
LASMIの評価項目についてですが…
- D(daily living)/日常生活
- I(interpersonal relations)/対人関係
- W(work)/労働または課題の遂行
- E(endurance&stability)/持続性・安定性
- R(self-recognition)/自己認識
…の項目で構成されています。
各項目における下位項目については次のとおりになります。
1.D(daily living)/日常生活
- D-1:生活リズムの確立
- D-2:身だしなみへの配慮-整容
- D-3:身だしなみへの配慮-服装
- D-4居室の掃除やかたづけ
- D-5:バランスのよい食生活
- D-6:交通機関
- D-7:金融機関
- D-8:買い物
- D-9:大切な物の管理
- D-10:金銭管理
- D-11:服装管理
- D-12:自由時間の過ごし方
2.I(interpersonal relations)/対人関係
- I-1:発話の明瞭さ
- I-2:自発性
- I-3:状況判断
- I-4:理解力
- I-5:主張
- I-6:断る
- I-7:応答
- I-8:協調性
- I-9:マナー
- I-10:自主的なつきあい
- I-11:援助者とのつきあい
- I-12:友人とのつきあい
- I-13:異性とのつきあい
3.W(work)/労働または課題の遂行
- W-1:役割の自覚
- W-2:課題への挑戦
- W-3:課題達成の見通し
- W-4:手順の理解
- W-5:手順の変更
- W-6:課題遂行の自主性
- W-7:持続性・安定性
- W-8:ペースの変更
- W-9:あいまいさに対する対処
- W-10:ストレス耐性
4.E(endurance&stability)/持続性・安定性
- E-1:現在の社会適応度
- E-2:持続性・安定性の傾向
5.R(self-recognition)/自己認識
- R-1:障害の理解
- R-2:過大(小)な自己認識
- R-3:現実離れ
LASMIの採点について
LASMIの評点についてですが、0点(問題なし)~4点(大変問題がある)の5段階で評定します。
また、評価項目ごとにマニュアルにより詳細なアンカーポイントや計算方法、レーダーチャートなどが定義されています。
LASMIのメリット・デメリットについて
では、LASMIを使用して評価をすることのメリット、デメリットについてはどのようなものがあげられるのでしょうか?
以下にそれぞれ解説します。
メリット
LASMIの評価項目である「E(endurance&stability)/持続性・安定性」の2項目と、「R(self-recognition)/自己認識」3項目は、統合失調症の対象者の障害特徴である生活経過の不安定さを評価として扱われる下位尺度であり、“機能の全体的評定尺度(GAF尺度)”や“精神科リハビリテーション行動評価尺度(REHAB)”といった評価方法には有さない尺度になります。
つまりLASMIは他の評価と比べても過去1か月~1年の時間的な経過のなかで評価するように構成されている点からもより対象者を包括的に評価でき、必要とする援助や支援の度合いについても考えられているという点がメリットといえます。
デメリット
しかし、LASMIは対象者の社会生活能力を多面的、包括的に把握できる方法である反面、評価者がLASMIを使いこなせるようになるまでには時間がかかってしまう…というデメリットも有しています。
また評価者と対象者の社会生活全般にかかわる立場や状況でないと評価ができず、不明値が多くなり、結果的に正確な評価ができず社会生活能力をとらえることができなくなってしまう場合もあります。