深部腱反射検査- 目的・種類・方法・注意点などについて

深部腱反射検査- 目的・種類・方法・注意点などについて 用語

深部腱反射は、神経系の状態を評価するための重要な検査で、腱を軽く叩くことで筋肉が反射的に収縮する様子を観察します。
異常があれば神経障害を示唆します。

本記事ではこの深部腱反射の目的や種類、方法や注意点などについて解説します。


深部腱反射検査とは

深部腱反射(しんぶけんはんしゃ)検査は、神経学的検査の一つで、反射弓を通じて筋肉や腱がどのように反応するかを評価するために行われます。
反射弓とは、感覚神経、脊髄、運動神経が協力して反射を起こす経路であり、異常があればどこかに問題があることが示唆されます。
例えば、膝蓋腱反射では膝の下部を軽く叩くと、正常であれば脛骨筋が収縮して脚が伸びる反応が見られます。

この反射の強さや遅延は、中枢神経系や末梢神経系の異常を示す重要な指標となるんだ!
深部腱反射の検査は、脳卒中や神経変性疾患の診断にも役立ち、異常な反応があれば適切な治療の検討材料となりますね!

深部腱反射検査の目的

深部腱反射査は、神経系の状態を評価する上で非常に重要な検査です。
この検査を行うことで、以下の目的を達成することができます。

  • 神経系の障害の有無の確認
  • 障害の部位の特定
  • 病気の進行度の評価
  • 診断の補助
  • 治療効果の評価

それぞれ解説します。

神経系の障害の有無の確認

深部腱反射検査は、中枢神経系や末梢神経系の障害の有無を確認するために行われます。
脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経系の障害では、反射が過剰に出現することが多く、これを反射の亢進と呼びます。
一方、末梢神経障害では、反射が弱まるか消失することが一般的です。
反射の異常は、神経系のどこに障害があるかを示す初期の手がかりとなります。

このように、神経系全体の状態を評価するために反射検査は不可欠なツールです。

障害の部位の特定

深部腱反射検査により、神経系の障害が中枢にあるのか末梢にあるのかを特定することが可能です。
上位運動ニューロン(脳や脊髄)の障害では、反射が亢進する傾向が見られます。
これは、脳や脊髄が通常反射を抑制しているため、それらの機能が損なわれると抑制が効かなくなり、過剰な反射が出現するためです。
一方、下位運動ニューロン(脊髄の前角細胞や末梢神経)の障害では、反射が減弱または消失します。

これにより、神経障害の部位を特定する手助けとなります。

病気の進行度の評価

深部腱反射検査は、病気の進行度を経時的に評価するためにも役立ちます。
神経系の病気、特に神経変性疾患や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などでは、反射の変化が進行とともに顕著になります。
定期的に反射検査を行うことで、病気がどの程度進行しているのか、またそれに伴って神経系がどのように変化しているのかを把握することができます。
これにより、適切な治療方針の決定や患者の予後の予測が可能となります。

反射の変化を追跡することは、病気の進展度合いを確認する重要な指標です。

診断の補助

深部腱反射検査は、他の診断検査と組み合わせることで、より正確な診断を下すための補助となります。
例えば、MRIやCTスキャンなどの画像診断、神経伝導速度検査といった電気生理学的検査と併用することで、障害の原因や部位をさらに詳細に把握できます。
反射異常が確認された場合、それが示唆する障害の範囲や性質を他の検査結果と照らし合わせて総合的に評価します。

このような多角的なアプローチにより、診断の精度が向上し、最適な治療計画を立てることが可能になります。

治療効果の評価

深部腱反射検査は、治療の効果を評価する際にも重要な役割を果たします。
治療を開始する前の反射の状態と治療後の変化を比較することで、治療がどの程度成功しているかを確認できます。
例えば、リハビリや薬物療法、手術後の神経機能の回復を観察する際、反射が正常に近づいているかどうかが効果判定の一つの指標となります。

このように、深部腱反射検査は治療経過を追跡し、治療法の適切性やさらなる治療の必要性を判断する上で非常に有用な手段です。

深部腱反射検査は、神経系の様々な疾患の診断、病状の評価、治療効果の判定に役立つ、非常に重要な検査の一つなんだ!
特に、中枢神経系と末梢神経系のどちらに問題があるかを区別する上で、迅速かつ簡便に行えるため、神経学的評価の初期段階で広く利用されているんだね!

深部腱反射検査の種類

深部腱反射検査にはいくつかの種類があります。
代表的なものとして…

  • 上腕二頭筋反射
  • 上腕三頭筋反射
  • 腕橈骨筋反射
  • 膝蓋腱反射
  • アキレス腱反射
  • 下顎反射
  • 後頭屈反射
  • 回内筋反射
  • 胸筋反射
  • 下肢内転筋反射

…などがあげられます。
それぞれ解説します。

上腕二頭筋反射

上腕二頭筋反射は、前腕の屈曲を引き起こす反射で、上腕二頭筋の腱をゴムハンマーで叩くことで確認します。
この反射は主に第5頸神経根(C5)および一部は第6頸神経根(C6)によって制御されています。
上腕二頭筋が適切に収縮し、前腕が屈曲する場合、反射は正常とされ、神経系に問題がないと判断されます。
反射が亢進している場合は上位運動ニューロン障害、減弱または消失している場合は下位運動ニューロン障害が疑われます。

この反射は、頸髄や神経根の病変を検出するための有用なツールです。

上腕三頭筋反射

上腕三頭筋反射は、前腕の伸展を確認するための反射検査であり、上腕三頭筋の腱を叩いて行います。
この反射は主に第7頸神経根(C7)によって支配されており、第6頸神経根(C6)が補助的に関与します。
腱を叩いた際に前腕がしっかりと伸展する場合は、神経系に問題がないことを示します。
反射が過剰に出現する場合は中枢神経系の障害が疑われ、減弱または消失する場合は末梢神経障害や筋肉の問題が示唆されます。

上腕三頭筋反射は、特に頸椎や神経根に関連する病変の診断に有用です。

腕橈骨筋反射

腕橈骨筋反射は、前腕の橈側への屈曲を確認するための反射検査です。
前腕の橈骨筋腱を叩くことで、腕が自然に屈曲し、手首がわずかに背屈するかを確認します。
この反射は主に第6頸神経根(C6)によって制御されており、肩や上肢に関連する神経障害を検出するのに役立ちます。
反射が亢進している場合、脊髄や上位運動ニューロンの病変が疑われ、減弱や消失が見られる場合は末梢神経系や筋肉に障害がある可能性があります。

腕橈骨筋反射は、神経学的評価において特に上肢の神経系の状態を確認する重要な手段です。

膝蓋腱反射

膝蓋腱反射は、膝の下にある膝蓋腱を叩くことで、下腿が前方に跳ね上がるかを確認する反射検査です。
この反射は主に第4腰神経根(L4)によって制御されており、正常な反射が見られる場合は、神経伝導が正常に行われていることを示します。
膝蓋腱反射が亢進している場合は、中枢神経系、特に上位運動ニューロンに障害がある可能性があります。
一方、反射が減弱または消失している場合は、末梢神経系の障害や筋肉の問題が考えられます。

膝蓋腱反射は、腰椎や下肢に関連する病変の早期発見に重要な役割を果たします。

アキレス腱反射

アキレス腱反射は、足首のアキレス腱を叩いて、足が下方に動くかを確認する反射検査です。
この反射は主に第1仙骨神経根(S1)によって制御されています。アキレス腱を軽く叩くと、正常であれば足が底屈する反応が見られ、反射が正常に機能していることを示します。
反射が亢進している場合は、上位運動ニューロン障害の可能性があり、減弱または消失している場合は、末梢神経障害や筋肉の異常が示唆されます。

アキレス腱反射は、特に下肢の神経系の状態を評価するために広く使用される重要な検査です。

下顎反射

下顎反射は、下顎を軽く叩くことで顎が上方に動くかを確認する反射です。
この反射は主に三叉神経(V3)の運動枝によって制御され、顎の動きと関連する神経系の機能を評価します。
異常がある場合、特に脳幹に関連する問題が疑われます。
正常な反射では、顎がわずかに動く程度の反応が見られますが、亢進した場合は上位運動ニューロン障害が示唆されます。

下顎反射は、顔面や口腔の神経系の異常を検出するための基本的な検査の一つです。

後頭屈反射

後頭屈反射は、首の筋肉に対する反射で、主に頸髄の神経根が関与します。
検査では、頭部を前方に軽く動かすことで、首の筋肉が自動的に屈曲するかどうかを確認します。
反射が正常に機能していれば、首の筋肉がわずかに収縮しますが、異常がある場合、脊髄や頸部の神経系の障害が疑われます。

この反射は、特に頸椎の病変や神経根の圧迫を早期に発見するための有用な手段です。

回内筋反射

回内筋反射は、前腕の回内を引き起こす筋肉の反射で、主に第7頸神経根(C7)によって制御されています。
この反射は、腕の回内筋を叩いて、その結果として前腕が回内するかどうかを確認します。
反射が亢進している場合は、中枢神経系の問題が疑われ、減弱または消失している場合は、末梢神経の障害を示す可能性があります。

この検査は、上肢の神経学的評価において補助的な役割を果たし、病変部位の特定に役立ちます。

胸筋反射

胸筋反射は、胸筋を叩くことで胸部の筋肉が収縮するかを確認する反射検査です。
この反射は主に第5および第6頸神経根(C5、C6)によって支配されており、胸筋の機能や神経系の状態を評価するのに用いられます。
反射が正常であれば、胸筋が軽く収縮するのが確認されますが、異常が見られる場合は、脊髄や神経根の問題が示唆されます。

この反射は、頸部や胸部の神経系の障害を早期に検出するための有用なツールです。

下肢内転筋反射

下肢内転筋反射は、内転筋を叩いて下肢が内側に動くかどうかを確認する反射検査です。
内転筋は主に第3腰神経根(L3)および第4腰神経根(L4)によって支配されており、この反射を検査することで、腰椎や下肢の神経の機能を評価することができます。
反射が亢進している場合は中枢神経系の障害が疑われ、減弱または消失している場合は末梢神経の問題が示唆されます。

下肢内転筋反射は、特に下肢の神経障害を診断する際に重要な役割を果たします。

これらの検査は、神経系や筋肉の健康状態を評価するために重要なんだ!
これらの反射検査により、神経伝達の異常や損傷の有無を迅速に把握し、適切な診断と治療計画を立てるための貴重な情報が得られるんですね!

深部腱反射検査の方法

深部腱反射検査は、神経系の状態を評価するために、ゴムハンマーなどで腱を叩き、筋肉が反射的に収縮する様子を観察する検査です。
この方法としては…

  • 被検者をリラックスさせる
  • 検査部位の確認
  • 打腱器の準備
  • 腱の上に指を置く
  • 一定の強さで叩く
  • 筋肉の収縮を観察
  • 反射の評価

…があげられます。
それぞれ解説します。

被検者をリラックスさせる

深部腱反射検査を正確に行うためには、まず被検者をリラックスさせることが重要です。
被検者が緊張していると筋肉が硬直し、反射が正常に発現しにくくなります。
そのため、快適な姿勢にし、体全体の力を抜いてリラックスした状態に誘導します。
例えば、椅子に座らせるか、ベッドに横になってもらい、安静を保ちやすい体勢を整えることが推奨されます。

これにより、検査がより正確に行われ、異常な反射を見逃すリスクが減少します。

検査部位の確認

反射検査の際には、対象とする腱の正確な位置を確認することが不可欠です。
例えば、膝蓋腱反射の場合は、膝の下の腱の正しい位置を確認し、左右両側を同じように検査します。
左右の比較は、神経系の異常が片側にのみ現れる場合に重要です。
腱の位置を誤ると、正しい反射が得られず、結果の解釈に影響を与えるため、慎重に確認する必要があります。

また、検査部位を確認することで、筋肉や腱の異常がないかも同時に評価することができます。

打腱器の準備

打腱器(ハンマー)は、深部腱反射検査において非常に重要なツールです。
打腱器は軽く握り、手首の力を抜いて使用することで、スムーズに腱を叩くことが可能になります。
手首を柔軟に使い、適度な角度で打腱器を振ることがポイントです。
強すぎず弱すぎない力で叩くことが求められ、打腱器の持ち方や使い方によって反射の出現具合が大きく影響を受けます。

このステップで正確に打腱器を使用することが、検査の成功に直結します。

腱の上に指を置く

腱を直接叩く際、検者の指を腱の上に置き、その上を打腱器で軽く叩くことで、筋肉の収縮をより直接的に感じることができます。
この方法により、微細な反射や筋収縮も確認しやすくなり、特に反射が弱い場合でも効果的に検査を行えます。
指を腱の上に置くことで、反射が目視で確認できない場合でも触覚で感じることができ、結果の評価が正確に行えるようになります。

また、被検者に対しても安心感を与えるため、スムーズに検査を進めるための一助となります。

一定の強さで叩く

腱を叩く際には、適度な強さと速度で打腱器を使用することが重要です。
強すぎる打撃は被検者に不快感を与える可能性があり、逆に弱すぎる打撃では正確な反射が得られません。
打腱器で腱を叩く際は、急速かつ適度な力で叩き、反射が確実に現れるようにします。
特に、打撃の強弱を適切に調整することで、反射の亢進や減弱の状態を正確に評価することが可能となります。

反射検査においては、適切な打撃の強さを保つことが非常に重要です。

筋肉の収縮を観察

深部腱反射検査では、叩打した腱だけでなく、その結果として起こる筋肉の収縮を観察することが必要です。
例えば、膝蓋腱反射であれば、大腿四頭筋の収縮が確認できるかどうかが重要です。
視覚的に筋肉の動きを確認することで、反射が正常か異常かを評価します。
筋肉の収縮が弱い場合や全く見られない場合は、神経系の異常が疑われます。

筋肉の反応を的確に観察することで、検査結果がより信頼性の高いものとなり、診断の精度が向上します。

反射の評価

反射の強さや出現具合を評価し、減弱や消失が見られる場合には、増強法を用いることが有効です。
増強法とは、被検者に歯を食いしばる、または腕を引っ張り合うなどの動作を行わせることで、反射を引き出しやすくする方法です。
特に反射が出にくい場合、この方法を用いることで、より正確に反射を評価することができます。

反射の出現が確認できた場合は、神経系が正常に機能している可能性が高く、反射が完全に消失している場合は、神経障害や筋疾患の可能性が考えられます。

深部腱反射検査では、患者をリラックスさせ、適切な力で腱を叩くことが重要なんだ!
また、左右の反応を比較することで、神経系の異常をより正確に評価できるんだね!

深部腱反射検査の記録方法

深部腱反射検査の結果は、カルテに記録することで、患者の状態の変化を把握し、診断や治療に役立てられます。
ここではその記録方法として…

  • 消失
  • 減弱
  • 正常
  • 軽度亢進
  • 中等度亢進
  • 高度亢進

…別の表記について解説します。

消失

反射が完全に見られない場合、「-」または「0」と記録されます。
これは、神経伝達の途絶や重度の神経損傷を示唆する重要な兆候です。
たとえば、末梢神経障害や下位運動ニューロンの損傷がある場合、反射が消失することが一般的です。
完全な反射消失は、病気や損傷の範囲を特定するための診断材料となり、治療の方向性を決定する上で重要な情報を提供します。

特に、他の検査と組み合わせて反射消失が確認される場合、神経系に深刻な障害が存在する可能性があります。

減弱

反射が軽度に見られる場合、「±」として記録され、反射が弱まっていることを示します。
これは、部分的な神経障害や筋力低下を反映しており、神経伝導の一部が損なわれている可能性があります。
減弱した反射は、末梢神経障害や筋肉の問題を示唆し、症状の程度を評価するために重要です。
例えば、糖尿病性神経障害などの病態では、反射が徐々に減弱していくことがよくあります。

減弱した反射を適切に記録することで、病気の進行度を評価する手助けになります。

正常

反射が正常に見られる場合、「+」として記録され、神経系が正常に機能していることを示します。正常な反射は、神経伝達が正しく行われていることを意味し、病変の可能性が低いと判断されます。通常の反射強度は左右対称であり、左右差がないことも確認されます。反射検査の結果が正常である場合、神経系や筋肉の異常がないと推定されます。神経学的評価の基準として、正常な反射の確認は他の異常を見つけるための比較材料にもなります。

軽度亢進

反射がやや強く見られる場合、「++」として記録され、軽度の反射亢進があることを示します。
これは、上位運動ニューロン障害の初期兆候であることが多く、脳や脊髄の病変が疑われる場合に見られます。
軽度亢進は、神経系が通常の反射抑制機能を失い、反射が過剰に表れる状態です。
この段階では、さらなる検査が必要となり、進行中の疾患があるかどうかを確認するための指標となります。

軽度亢進の記録は、病変の進行状況を把握するために役立ちます。

中等度亢進(+++)および高度亢進(++++) 反射が中等度(+++)または高度(++++)に強く見られる場合、それは重度の上位運動ニューロン障害を示しています。 中枢神経系の深刻な損傷、例えば脳卒中や多発性硬化症が原因である可能性が高いです。 これらの亢進した反射は、神経系が強く過剰反応していることを示し、反射が正常範囲を大幅に超えていることを意味します。 中等度や高度の亢進が確認された場合、速やかな治療やさらなる精密検査が必要です。 反射亢進の度合いを正確に記録することで、治療の必要性や進行度を把握するための重要な情報が得られます。 中等度亢進

中等度亢進は、反射が通常よりも強く、顕著に見られる状態を指し、「+++」と記録されます。
これは、上位運動ニューロン障害の進行が進んでいる可能性があり、脳や脊髄に問題があることを示唆します。
脳卒中や脊髄損傷、または多発性硬化症のような疾患が原因となり、中枢神経系が過剰な反射を引き起こしていると考えられます。
この状態は、反射抑制機能が失われ、神経系が通常の刺激に対して過敏に反応しているためです。

中等度亢進が見られる場合、さらなる神経学的検査や画像診断が推奨され、病変部位の特定と早期治療が重要となります。

高度亢進

高度亢進は、反射が非常に強く、異常に過敏な状態を示し、「++++」と記録されます。
これは、脳または脊髄の上位運動ニューロンが深刻に損傷していることを強く示唆します。
脳卒中や多発性硬化症の末期段階、または重度の脊髄損傷などが原因となることが多く、神経系が極端に反応している状態です。
高度亢進は、神経系の障害が進行しており、迅速な治療が必要であることを示す重要なサインです。

特に、反射が高度に亢進している場合は、日常生活や運動機能にも影響が出ることが多く、リハビリテーションや薬物療法が早期に必要となることが考えられます。

これらの記録方法を用いることで、反射の程度を客観的に評価し、神経系の異常を特定するのに役つんだ!
また、反射の変化を追跡することで、病気の進行状況や治療効果を評価するための重要な指標となるんですね!

深部腱反射検査の注意点

深部腱反射検査は、神経系の状態を評価する上で重要な検査ですが、正確な結果を得るためには、いくつかの注意点を守ることが大切です。
ここでは…

  • リラックス
  • 体位
  • 薬剤の影響
  • 叩く力
  • 叩く部位
  • 比較
  • 患者への説明
  • 環境
  • 個体差
  • 他の要因
  • 病的反射
  • 検査の繰り返し
  • 増強法の使用

…について解説します。

リラックス

深部腱反射検査を正確に行うためには、被検者の筋肉がリラックスした状態であることが必要です。
筋肉が緊張していると、反射が抑制されることが多く、正確な評価が難しくなります。
特に、被検者が意識的に力を入れている場合、反射が減弱または消失することがあります。
そのため、検査前に被検者にリラックスするよう促し、適切な姿勢を取らせることが大切です。

リラックスがうまくできない場合、医師は環境を整えたり、呼吸法などを用いて患者を落ち着かせる工夫が必要です。

体位

検査部位によって、適切な体位を取ることが、正確な反射を得るために重要です。
たとえば、膝蓋腱反射を測定する場合、被検者の膝が自然に屈曲した状態で椅子に座らせるのが理想的です。
一方で、アキレス腱反射の場合は、被検者を仰臥位にするか、足を軽く持ち上げる体位が推奨されます。

体位が不適切だと、反射が正確に確認できないことがあり、検査結果に誤りを生じさせる可能性があります。

薬剤の影響

一部の薬剤、特に鎮静剤や筋弛緩剤は、反射の強さや出現に影響を与える可能性があります。
これらの薬剤は神経系や筋肉の活動を抑制することがあり、反射が減弱することがあります。
被検者が検査前に薬を服用している場合、必ず医師にその旨を伝えることが重要です。
薬剤の影響を考慮した上で、反射の異常が神経障害によるものなのか、薬物の影響によるものなのかを判断する必要があります。

この情報がないと、誤った診断に繋がる可能性があるため、服用中の薬について詳細に説明することが求められます。

叩く力

ゴムハンマーで腱を叩く際の力加減は、検査結果に大きく影響します。
腱の太さや深さ、患者の年齢や体格に応じて、適切な強さで叩くことが重要です。
強すぎる打撃は被検者に不快感を与え、逆に弱すぎる打撃では正確な反射が得られません。
また、年配の方や小児では、腱や筋肉が異なるため、打撃の力を慎重に調整する必要があります。

反射の強さを正確に評価するために、力加減の適切な調整は非常に重要な要素です。

叩く部位

深部腱反射検査では、正確な部位を叩くことが不可欠です。
腱の位置を正確に把握し、その部位を的確に叩かないと、正しい反射が得られません。
腱を外して叩いた場合、筋肉の収縮が不十分であったり、反射が全く見られないことがあります。
特に、解剖学的知識が必要で、腱の位置を正確に確認するためには経験が求められます。

また、場合によっては、検者の指を腱の上に置いて、その上から叩く方法が推奨されることもあります。

比較

左右の反射を比較することは、神経系の異常をより正確に評価する上で重要です。
正常な状態では、左右の反射は対称的に現れるため、片側だけ反射が弱い、または強い場合、神経系の一部に異常がある可能性が考えられます。
このため、必ず左右の反射を同じ条件下で検査し、その差を確認することが求められます。

左右の比較は、特に末梢神経や中枢神経の障害を特定する上で非常に有用です。

患者への説明

検査を行う前に、患者に対して検査の目的や内容をわかりやすく説明することが重要です。
特に、深部腱反射検査では、患者が不安や緊張を感じることがあるため、事前にどのような検査が行われるかをしっかり伝えることでリラックスさせることができます。
不安が取り除かれることで、検査中に筋肉が緊張するのを防ぐ効果もあります。

また、患者が検査の目的を理解することで、検査への協力が得やすくなり、より正確な結果が期待できます。

環境

深部腱反射検査を行う際には、静かでリラックスできる環境が理想的です。
騒音や周囲の刺激が多いと、患者がリラックスできず、正確な検査結果が得られにくくなります。
医療現場では、できるだけ落ち着いた環境を整え、患者が安心して検査を受けられるよう配慮することが求められます。

特に、リラックスが必要な反射検査では、環境が結果に大きな影響を与えるため、十分な配慮が必要です。

個体差

反射の強さには個体差があり、患者ごとに異なる反応が見られることがあります。
個体差には年齢、性別、体格、筋肉量などが関与しており、全ての人に同じ基準で評価を行うことはできません。
したがって、検査結果を解釈する際には、患者の個々の特徴を考慮し、異常かどうかを判断する必要があります。

例えば、元々反射が強い人や弱い人もおり、標準的な基準だけで異常を判断するのではなく、他の要素とも照らし合わせて総合的に評価することが求められます。

他の要因

反射検査には、筋肉の疲労や寒さ、痛みなどの外部要因が影響を与える場合があります。
例えば、筋肉が疲労している状態では反射が減弱し、寒さによる筋肉の収縮で反射が誤って亢進することもあります。
こうした要因を考慮し、可能な限り検査の条件を均一に保つことが重要です。

外部要因が反射に影響を与えている可能性がある場合には、そのことを記録に残し、検査結果の解釈時に参照することが必要です。

病的反射

通常の反射に加え、病的な反射が出現する場合もあります。
バビンスキー反射やホフマン反射など、病的反射は中枢神経系の損傷を示す重要な兆候となります。
これらの反射が確認された場合、上位運動ニューロンに障害がある可能性が高いため、さらなる診断が必要です。
病的反射は、特に脳や脊髄に関連する疾患を早期に発見するための重要な手がかりとなります。

このような異常反射が確認された場合、適切な診断と治療に速やかに移行することが求められます。

検査の繰り返し

病気の進行状況や治療の効果を評価するために、深部腱反射検査を定期的に行うことがあります。
特に神経変性疾患や慢性疾患では、反射の変化を追跡することで、病気の進行度合いを把握し、治療方針を適切に調整することが可能です。
定期的な検査によって、反射が改善しているのか、悪化しているのかを評価することで、患者の状態を客観的に把握できます。

経時的な変化を記録することは、長期的な治療効果の評価にとって重要な情報源となります。

増強法の使用

反射が消失または減弱している場合、増強法を使用することが効果的です。
増強法とは、被検者に歯を食いしばらせる、または腕を引っ張らせるなど、別の動作を行わせることで反射を引き出す方法です。
これにより、反射が出にくい場合でも、より明確な反応を確認することができます。
特に、神経が軽度に障害されている場合には、この方法が有効です。

増強法を適切に使用することで、反射検査の精度を高め、正確な診断に繋げることができます。

深部腱反射検査は、神経系の異常を評価する重要な手段ですが、単独では診断を確定できないんだ!
正確な診断を下すためには、他の検査結果と組み合わせて総合的に判断する必要があるんだね!

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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
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