不安や抑うつの評価でも病院環境下に特化したものとして”HADS”があります。
本記事ではこのHADSの目的や方法について解説します。
病院不安抑うつ尺度(HADS)とは?
病院不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale, HADS)は、医療環境において不安と抑うつを測定するための尺度です。
この尺度は、病院の患者の心理的な苦痛を評価するために特別に設計されています。
HADSは、不安と抑うつの両方のサブスケールを含み、それぞれのサブスケールには7つの質問があります。
これにより、セラピストをはじめとした医療専門家は患者の心理的な状態を迅速かつ効果的に評価し、必要な介入を行うことができます。
目的
病院不安抑うつ尺度(HADS)の主な目的は、医療環境における患者の不安と抑うつの程度を評価することです。
この尺度は、医療関連の環境で精神的な苦痛を経験している患者を特定し、彼らの心理的な健康状態を追跡するために使用されます。
HADSは、患者が抱える心理的な問題を理解し、適切なケアや治療を提供するための有効なツールとして広く採用されています。
また、この尺度は不安と抑うつの両方を個別に評価することができ、その結果は患者の治療計画や介入の決定に役立てられます。
所要時間
所要時間は2〜5分です。
評価方法
14の設問に4件法で回答してもらい、不安と抑うつのそれぞれの合計点を算出します。
合計点が高いほど不安と抑うつが強いことを示します。
HADSの質問項目
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)の質問項目は以下の通りになります。
1. 緊張したり気持ちが張りつめたりすることが
– しょっちゅうあった
– たびたびあった
– 時々あった
– 全く無かった
2. 昔楽しんだことを今でも楽しいと思うことが
– めったに無かった
– 少しだけあった
– かなりあった
– まったく同じだけあった
3. 何か恐ろしいことが起ころうとしているという恐怖感を持つことが
– しょっちゅうあって、非常に気になった
– たびたびあるが、あまり気にならなかった
– 少しあるが、気にならなかった
– 全く無かった
4. 物事の面白い面を笑ったり、理解したりすることが
– 全く出来なかった
– 少しだけ出来た
– かなり出来た
– いつもと同じだけ出来た
5. 心配事が心に浮かぶことが
– しょっちゅうあった
– たびたびあった
– それほど多くは無いが、時々あった
– ごくたまにあった
6. 機嫌の良いことが
– 全く無かった
– たまにあった
– 時々あった
– しょっちゅうあった
7. 楽に座って、くつろぐことが
– 全く出来なかった
– たまに出来た
– たいてい出来た
– 必ず出来た
8. 仕事を怠けているように感じることが
– ほとんどいつもあった
– たびたびあった
– 時々あった
– 全く無かった
9. 不安で落ち着かないような恐怖感を持つことが
– しょっちゅうあった
– たびたびあった
– 時々あった
– 全く無かった
10. 自分の顔、髪型、服装に関して
– 関心が無くなった
– 以前よりも気を配っていなかった
– 以前ほどは気を配っていなかったかもしれない
– いつもと同じように気を配っていた
11. じっとしていられないほど落ち着かないことが
– しょっちゅうあった
– たびたびあった
– 少しだけあった
– 全く無かった
12. 物事を楽しみにして待つことが
– めったに無かった
– 以前よりも明らかに少なかった
– 以前ほどは無かった
– 全く無かった
13. 突然、理由の無い恐怖感(パニック)に襲われることが
– しょっちゅうあった
– たびたびあった
– 少しだけあった
– 全く無かった
14. 面白い本や、ラジオ又はテレビ番組を楽しむことが
– ほとんどめったに出来なかった
– たまに出来た
– 時々出来た
– たびたび出来た
これらの各質問項目は、患者が最近の経験に基づいて自己評価するものです。
回答は不安と抑うつのサブスケールにそれぞれ対応し、総合的な心理的苦痛のレベルを評価するために使用されます。
採点・カットオフ値
合計点が0〜7点の場合は「不安、抑うつなし」。
合計点が8〜10点の場合は「疑いあり」。
合計点が11点以上の場合は「不安、抑うつあり」と判断されます。