“両立支援”の意味や目指す方向は(なんとなくでも)理解できている。
でもいざ支援をしようとしても…
- うまく本心を聞き出すことができない。
- 病気や障害の特徴がいまいちピンとこない。
- どこと連携をしたらよいのかわからない。
…などの問題がでてくるようです。
もちろん、クライアントの両立支援のためには意味や目的の理解だけでは不十分です。
では、実際に両立支援コーディネーターにはどのような能力が求められるのでしょうか?
今回は両立支援コーディネーターに必要な理由と、求められる能力についてまとめてみました。
この記事が、両立支援コーディネーターを取得したけど、どう支援したらよいかわからない…うまくできない…なんて支援者の方の一助になれば幸いです。
そもそも両立支援コーディネーターはなぜ必要なのか?
クライアントの生活と仕事を両立するにあたって、両立支援コーディネーターはなぜ必要なのでしょうか?
結論から言えば、次の2点が理由としてあげられます。
- 医療という専門性と、社会福祉資源の複雑さのため
- クライアント-事業場-医療の共通言語が少ない
以下にそれぞれ解説します。
医療という専門性と、社会福祉資源の複雑さのため
治療真っ最中のクライアント自身やその家族にとって、治療に関する医療的な内容、仕事や生活に関する社会福祉資源的な内容は多種多様のため非常に複雑になってきます。
もちろん当事者であるクライアント自身で手続きなどを進めることもできるのでしょうが、やはりクライアントやその家族だけでは対処しきれない部分は多くなってきます。
そこで労働者であるクライアントと医療と職場の橋渡しができるようサポートする両立支援コーディネーターが必要になってくるということです。
治療と仕事や生活とを両立させるためのアドバイザー…コンシェルジュ…のようなイメージでしょうね。
クライアント-職場-医療の共通言語が少ない
クライアントが治療と生活と仕事を両立していくためには、クライアント-職場-医療間の情報共有が必要です。
しかしそれぞれの業界や立ち位置の違いもあって情報共有するにしてもその言葉は共通言語ではないことが多く、相互不理解や温度差、解釈の違いなどが生まれてきてしまいます。
この課題解決のためにも、両立支援コーディネーターが“翻訳者”として間に入る必要があると言えます。
そう考えると、翻訳者…のような役割も担うイメージになりますね。
両立支援コーディネーターに求められる能力とは?
では、上記のような理由から支援を行うにあたって、両立支援コーディネーターに求められる能力とはどのようなものになるのでしょうか?
個々によって様々かもしれませんが、以下の8点を両立支援コーディネーターに基本的に求められる能力としています。
- ソーシャルワーク技能
- 各疾病に関する基礎知識
- 障害に関する基礎知識
- メンタルサポート
- 労働衛生、関連法規
- 医療機関および就労関連施設の調査把握
- 事業所側からみた就労に対する理解
- 経験値を積みあげること
それぞれ解説します。
ソーシャルワーク技能
両立支援コーディネーターの資格を取得する対象として、最初は社会福祉士のみでした。
その背景もあるためか、ソーシャルワーク技能が非常に求められてきます。
本人、家族、職場からの傾聴や調整、浮上した問題点の整理を行う技術が必要とされます。
各疾病に関する基礎知識
クライアントが治療をしている疾病についての基礎的な知識は必要になってきます。
上述したように、翻訳者的な役割も担うことから、医療専門用語や基礎的な知識についても知っておく必要があります。
障害に関する基礎知識
その疾病から起こり得る障害についての理解、今後どのようにな経緯を辿っていくかの回復過程(予後予測)についても両立支援コーディネーターにとっては必要な知識になってきます。
その障害が固定されるもなのか、進行するものなのかなどについても予測を立てないといけません。
また、その段階に合わせた障害手帳の手続きや受けれる保障についても知っておく必要もありますね。
メンタルサポート
クライアント本人やその家族はもちろん、職場の担当者といった人へのメンタルサポートとしての役割も、両立支援コーディネーターは担っています。
そうなると精神療法、カウンセリング技能なども求められるでしょうね。
労働衛生、関連法規
働くことを支援することでも、労働衛生をはじめとした仕事に関しての法規に関する知識は必要とされます。
医療機関および就労関連施設の調査把握
自分が関わる地域においての医療機関、就労関連施設についての知識が必要になってきます。
どこに医療機関があって、どのような就労関連施設があるのかを知ることは、社会資源の把握につながります。
就労支援、職業リハに関わる施設や事業所、サービス一覧についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
事業所側からみた就労に対する理解
クライアントを受け入れる側である職場や事業所側の、就労に対しての理解も両立支援コーディネーターは知っておかなければなりません。
多くの場合、クライアントの治療中の疾病や障害に対してどのような配慮をすればよいのかわからないということがあります。
クライアントが働く職場側が抱える課題解決をすることも、両立支援には必要になってきます。
経験値を積みあげること
両立支援は座学での知識だけでは成り立ちません。
何よりも両立支援を実践し、事例を多く経験し、それを事例検討会やメール検討会で共有していくという経験値をあげる必要があります。
目的をもって、場数をこなしていく…ということです。
まとめ
本記事では、両立支援コーディネーターに必要な理由と求められる能力について解説しました。
両立支援コーディネーターという比較的新しい立ち位置で、どのようなことができるのかを明確にするには、何を求められているのか?を追求していく必要があります。
今回あげた両立支援コーディネーターが必要な理由と求められる能力を、コーディネーター自身が理解しておくことで自身の向うべき方向が明確になってくるのかと思うんです。