ADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)は、アルツハイマー病患者の認知機能と非認知機能を評価する尺度です。
本記事ではこの目的や2つのバージョンと違いについて解説します。
ADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)とは
ADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)は、1983年にMohsらによって開発されアルツハイマー型認知症(AD)の患者の認知機能と行動機能を評価するために使用される臨床評価ツールです1)。
このスケールは、アルツハイマー病の進行を定量的に追跡し、治療の効果を評価するために広く使用されています。
目的
ADASの主な目的としては…
- 認知機能の評価
- 症状の進行の追跡
- 治療効果の評価
- 臨床試験での使用
…になります。
以下にそれぞれ解説します。
認知機能の評価
ADASは、記憶、言語、指示理解、構成能力など、アルツハイマー病におけるさまざまな認知機能の障害を評価するために設計されています。
これにより、患者の認知機能の現状を把握し、病状の進行をモニタリングできます。
症状の進行の追跡
ADASは、アルツハイマー病の進行過程での認知機能の変化を定期的に評価するために使用されます。
これにより、病気の進行度をより正確に追跡し、適切な介入や治療計画を立てることができます。
治療効果の評価
ADASは、アルツハイマー病の患者が受けている治療の有効性を評価するためにも使用されます。
治療開始前と治療後のスコアを比較することで、治療の効果を定量的に判断できます。
臨床試験での使用
新しい治療法や薬剤の開発において、ADASは臨床試験でアルツハイマー病患者の認知機能の変化を評価する重要なツールとして使用されます。
これにより、新しい治療法の有効性を科学的に評価することが可能になります。
ADASの2つのバージョンと違いについて
ADASには主に2つのバージョンがあります。
- ADAS-Cog (Cognitive Subscale)
- ADAS-Non-Cog (Non-Cognitive Subscale)
以下にそれぞれの違いについて解説します。
ADAS-Cog (Cognitive Subscale)
ADAS-Cogは、特にアルツハイマー病の認知機能障害の程度を評価し、治療効果をモニタリングするために使用されます。
主に気分、精神病理学的症状、行動異常など、非認知機能に焦点を当てています。
尺度は11の項目で構成され、単語再生、口頭言語能力、聴覚理解、命令に従う能力、構成行為などを評価します。
ADAS-Non-Cog (Non-Cognitive Subscale)
ADAS-Non-Cogは、アルツハイマー病に伴う非認知的な症状の重症度を評価し、これらの症状が治療にどのように反応するかをモニタリングするために使用されます。
つまり、認知機能以外の側面、特に精神病理学的症状や行動異常に焦点を当てています。
この尺度は10の項目で構成され、涙もろさ、抑うつ気分、集中力の欠如、協力度、妄想、幻覚、徘徊、多動、振戦、食欲の変化などを評価します。
参考
1)Rosen WG, Mohs RC, Davis KL. A new rating scale for Alzheimer’s disease. Am J Psychiatry. 1984 Nov;141(11):1356-64. doi:10.1176/ajp.141.11.1356. PMID: 6496779.