NMスケール(N式老年者用精神状態尺度)- 方法やメリット、デメリット、点数と重症度について

NMスケール(N式老年者用精神状態尺度)- 方法やメリット、デメリット、点数と重症度について 検査

認知症の患者の精神機能を観察によって行う検査に“N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)”があります。
本記事ではこの使用方法やメリット、デメリット、点数と重症度について解説します。


N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)とは?

N式老年者用精神状態尺度(NMスケールは、老年者(高齢者)や認知症の方の日常生活においての実際の精神機能を、様々な角度から捉え全般的な重症度を評価する検査法です。
このNMスケールの主な方法は“行動観察”によるものという点が特徴とも言えます。

被験者の行動を観察し、その結果を点数化することで認知機能の状態を評価し、その症状がどの程度なのかを表せるようにつくられています。
認知症の有無のスクリーニングにも利用できます。

また、N-ADLとの併用で、日常生活面での実際的能力を総合的にとらえることができます。

NMスケールって英語ではなんと表記する?

ちなみにこの“NMスケール”は“New Clinical Scale for Rating of Mental States of Elderly”の略で、英語では“NM Scale”と表記されることが一般的です。

NMスケールのメリット・デメリット

では、他の認知症評価、検査方法ではなくNMスケールで被験者の認知機能を検査することでのメリット、デメリットってどのようなものがあげられるでしょうか?
思うに…

メリット

  • 行動観察で実施可能なので、検査に拒否的な場合、コミュニケーションが困難な場合でも評価することができる
  • 専門家でなくても実施可能
  • 短時間で実施可能
  • 日常生活での実際的な能力や状態から評価するので、具体的な問題点が明確化しやすい
  • 具体的な情報収集のツールとして有用

デメリット

  • 誰でも行えるため、評価者の経験や知識によって評価結果が一定にならない場合がある

…といったものがあげられます。

NMスケールの使用方法

NMスケールは被験者の…

  • 家事、身辺処理
  • 関心、意欲、交流
  • 会話
  • 記銘、記憶
  • 見当識

…の5項目について評価していきます。
以下に各項目と点数別の基準をまとめてみます。

家事、身辺処理

  • 0点:不能
  • 1点:ほとんど不能
  • 3点:買い物不能、ごく簡単な家事、整理も不完全
  • 5点:簡単な買い物も不確か、ごく簡単な家事、整理のみ可能
  • 7点:簡単な買い物は可能、留守番、複雑な家事、整理は困難
  • 9点:やや不確実だが、買い物、留守番、家事などを一応任せられる
  • 10点:正常

関心、意欲、交流

  • 0点:無関心、全く何もしない
  • 1点:周囲に多少関心あり。ぼんやりと無為に過ごすことが多い
  • 3点:自らはほとんど何もしないが指示されれば簡単なことはしようとする
  • 5点:習慣的なことはある程度自らする。気が向けば人に話しかける
  • 7点:運動・家事・仕事・趣味などを気がむけばする。必要なことは話しかける
  • 9点:やや積極性の低下がみられるが、ほぼ正解
  • 10点:正常

会話

  • 0点:呼びかけに無反応
  • 1点:呼びかけに一応反応するが、自ら話すことはない
  • 3点:ごく簡単な会話のみ可能。つじつまの合わないことが多い
  • 5点:簡単な会話は可能であるが、つじつまの合わないことがある
  • 7点:話し方は、滑らかではないが、簡単な会話は通じる
  • 9点:日常会話はほぼ正常。複雑な会話がやや困難
  • 10点:正常

記銘、記憶

  • 0点:不能
  • 1点:新しいことは全く覚えられない。古い記憶がまれにある
  • 3点:最近の記憶はほとんどない。古い記憶多少残存。生年月日不確か
  • 5点:最近の出来事の記憶困難。古い記憶の部分的脱落。生年月日正答
  • 7点:最近の出来事をよく忘れる。古い記憶はほぼ正常
  • 9点:最近の出来事を時々忘れる
  • 10点:正常

見当識

  • 0点:まったくなし
  • 1点:ほとんどなし。人物の弁別困難
  • 3点:失見当識著明。家族と他人との区別は一応できるが、誰かはわからない
  • 5点:失見当識がかなりあり(日時・年齢・場所など不確か、道に迷う)
  • 7点:時々場所を間違えることがある
  • 9点:時々日時を間違えることがある
  • 10点:正常

NMスケールの点数と具体例について

NMスケールを行うためには特に講習会の受講や訓練、資格といったものは必要ありません。
前述したようにNMスケールは誰でも行える…という点でメリットはあります。
しかし、検者側の知識や経験、時には感情や被験者との関係性などによってばらつきがでてしまうというデメリットもあります。
そのデメリットの解決手段として、NMスケールでは“NMスケールの手引き”という具体的な一例とそれに合わせた点数とが準備されて、より正確な評価ができるようになっています。

以下にそれぞれの項目における具体例を紹介します。

家事、身辺処理

  • 0点:(不能)
  • 1点:“おやつ”や“ちり紙”などが手の届く範囲にあれば取れる
  • 3点:おしぼりを渡せば顔や手を拭くことができる・手の届く範囲にあればお茶が飲める
  • 5点:声掛けすればベッド周辺の整理ができる・付き添えば買い物ができる
  • 7点:食器が洗える、洗面用具の後片付けができる・エレベーターに1人で乗れる、その操作ができる
  • 9点:部屋の掃除、自分の衣類の整理ができる・どうにか洗濯機が使える
  • 10点:買い物、娯楽、外出などができる・現金の管理ができる

関心、意欲、交流

  • 0点:(無関心、全く何もしない)
  • 1点:(周囲に多少関心あり。ぼんやりと無為に過ごすことが多い)
  • 3点:手渡せば雑誌のグラビアなども見る・ついていればテレビをなんとなく見る
  • 5点:話しかけられれば話がはずむ・声掛けにより行事に参加する・テレビを興味をもって見る
  • 7点:気が向けば行事に参加する・テレビ、ラジオの番組や本を選択する
  • 9点:周囲の人と雑談ができる・家族や同室者の行動を知っている・趣味を持っている
  • 10点:部屋やベッド周辺を飾り、家族や同室者と楽しむ・家族や他人の面倒をみる

会話

  • 0点:(呼びかけに無反応)
  • 1点:おうむ返しに言葉が言える
  • 3点:ごく簡単な会話のみ可能、つじつまの合わないことが多い・ありがとう、ごちそうさま、おはようなどが言える
  • 5点:(簡単な会話は可能であるが、つじつまの合わないことがある)
  • 7点:相手の話が理解できる・聴力、言語障害があっても手話、筆談で通じる
  • 9点:(日常会話はほぼ正常。複雑な会話がやや困難)
  • 10点:(正常)

記銘、記憶

  • 0点:(不能)
  • 1点:名前が言える
  • 3点:出生地を覚えている・生まれ年の干支が言える
  • 5点:(最近の出来事の記憶困難。古い記憶の部分的脱落。生年月日正答。)
  • 7点:物をしまい忘れて騒ぐ・服薬の自己管理が難しい
  • 9点:1人で受信できるが、時に診察日を忘れる・服薬の自己管理ができるが時に忘れる
  • 10点:(正常)

見当識

  • 0点:(まったくなし)
  • 1点:男女の区別はできる
  • 3点:自分の年齢をかけ離れた年で答える
  • 5点:看護師、医師、寮母、指導員の見分けができる
  • 7点:目的の場所へ行こうとするが時に迷う
  • 9点:(時々日時を間違えることがある)
  • 10点:(正常)

NMスケールの点数と重症度について

NMスケールの総合点と重症度については、以下のとおりになります。

  • 正常:50~48点
  • 境界:47~43点
  • 軽度認知症:42~31点
  • 中等度認知症:30~17点
  • 重度認知症:16~0点

使い方によっては非常に被験者の認知症の状態把握に役立つことができるNMスケールだけど、そのメリット、デメリットをしっかりと理解したうえで利用しないといけないね!
また他の検査でも同じことが言えますが、その点数結果だけに振り回されず、その点数に至った背景にまでしっかりと注目することが作業療法士として必要な視点だと言えますね!

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