GBSスケール(認知症検査)- 目的や方法、メリット・デメリットについて

検査

認知症の検査は様々ですがGBSスケールはより認知症の方の状態を広く把握するために有用な検査方法と言えます。
そこで本記事ではGBSスケールの目的や方法、メリット・デメリットについて解説します。


GBSスケールとは?

GBSスケールとは、認知症の重症度と質的差異を評価するために開発された検査です。
1986年に『The GBS scale: A New Rating Scale for Dementia Syndromes』という論文で発表されています。
開発者である“Gottfries”、“Bråne” 、“G. Steen”の頭文字からGBSスケールと呼ばれています!

GBSスケールの英語表記について

GBSスケールを英語では“The Gottfries-Bråne-Steen scale”と表記しますが、ほとんどは“GBS scale”と使われています。

GBSスケールの目的について

では、GBSスケールを使用する目的についてですが、そもそもGBSスケールって、

  • 運動機能
  • 知的機能
  • 感情機能
  • 精神症状

…の4つの領域について、認知症の症状の重症度…つまり量的な評価だけでなく、「どのような症状が現れているか?」という質的な評価も行うことを目的としています。
量的な評価(定量的評価)では知的機能の評価を中心に、質的な評価(定性的評価)では認知症状のプロフィールや類型を知るのに有効になります。
定量的評価と定性的評価の両方で認知症を評価できる検査…と解釈すればよいでしょうね。

GBSスケールは認知症の診断に使用される?

よく勘違いされることなんですけど、GBSスケールはあくまで認知症の定量的、定性的な“評価”に使われるのであって“診断”には使用されないんです。
認知症診断のガイドラインを読むと、診断のためにHDS-RやMMSEといった検査によって認知機能検査を行うことはあってもGBSスケールを使用して診断に使用することはないようですね。

GBSスケールの使用方法について

GBSスケールは基本的に対象者の状態について詳細に把握しているスタッフ(もしくは家族)が行うことを前提としています。
検査項目としては、

  • A.運動機能(6項目)
  • B.知的機能(11項目)
  • C.感情機能(3項目)
  • D.認知症に共通なその他の症状(6項目)

…の計26項目で構成されています。
以下に詳細を記しておきますね。

A.運動機能

1.着脱衣の障害
2.摂食行動の障害
3.身体活動の障害
4.自発活動の欠如
5.個人的衛生管理の障害
6.用便の管理不能

B.知的機能

1.場所に関する見当識障害
2.時間に関する見当識障害
3.自己に関する見当識障害
4.最近の記憶の障害
5.昔の記憶の障害
6.覚醒度の障害
7.集中力の障害
8.速い動作の困難
9.放心状態
10.冗漫さ
11.注意力散漫

C.感情機能

1.感情鈍麻
2.感情不安定
3.動機づけの低減

D.認知症に共通なその他の症状

1.錯乱
2.焦燥
3.不安
4.苦悩
5.感情の抑うつ
6.落ち着かなさ
GBSスケールによる検査は、各評価項目毎に対する被験者の最近の状態について、0,1,2,3,4,5,6,の得点をつけて評価します。
ただ各項目に対しての評価基準はスペースの都合上割愛します(泣)。

GBSスケールを行う際の注意点

前述したように、対象者の状態を詳細に把握しているスタッフによってGBSスケールは行われますが、評価を繰り返す度にばらつきがでないように、

  • 同じ評価者で行う
  • 同じ時間に評価を行う

といった注意が必要です。

GBSスケールのメリット・デメリット

他の認知症検査と比べて、GBSスケールを使用することでのメリット・デメリットってどのようなものがあるのでしょうか?

メリット(長所)

GBSスケールを使用するメリットとしては、

  • 誰でも実施が可能なこと
  • 特別な訓練なく簡単に実施できること

…があげられるかなって思います。
誰でもすぐに行うことができる評価ツールってことは、医療や介護専門のスタッフでもない家族でも可能ということですからね。
こういうことって今後、現場の中心が在宅を含めた地域に移行していく医療の在り方にマッチしていると思うんですよね。

デメリット(短所)

GBSスケールを使用するデメリットって、

  • エビデンスがそこまで高くない

…ってことかなって思います。
実際、アメリカではGBSスケールの有用性は報告されているものの、エビデンスレベルの高さからCDRやFAST(グレードB)が推奨されているようですからね。

参考:認知症診療ガイドラインの日常診療における活用

認知症の重症度だけでなくその質的な視点でも評価できるGBSスケールですが、今後在宅を中心とするリハビリテーションの現場では特に重宝されるはずだね!
経時的に状態を把握することで、その状況に合わせた作業療法プログラムの立案に役立たせることができますからね!

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