平成29年3月12日から高齢者講習が合理化・高度化され、70歳以上の高齢者の方は免許更新時に高齢者講習の受講が義務化されました。
また75歳以上の高齢者においては“認知機能検査”の義務化もされていますが、なかなかこの流れが複雑なんです。
そこで今回は『認知症高齢者の方の自動車運転免許証の更新と高齢者講習の流れ』について解説します。
免許更新時の高齢者講習の流れについて
まず、自動車運転免許証更新時における高齢者講習等の流れについてですが、
- 年齢(70歳~74歳or75歳以上)
- 認知機能検査の結果
…で大きく分けられます。
それぞれ解説します。
年齢での区分(70歳~74歳の場合)
自動車運転免許証の更新時の段階で70歳以上74歳以下の場合は、“更新時における高齢者講習”の受講が義務化されています。
更新時における高齢者講習について(70歳~74歳)
70歳~74歳の方を対象とした“更新時における高齢者講習”の内容については、
- DVDによる交通ルールや安全運転に関する知識の確認と指導員による運転に関する質問
- 動体視力、夜間視力、視野の測定
- ドライブレコーダーで運転状況を録画し、映像を確認しながら指導員からのアドバイス
…という内容になっていて、この約2時間の講習を受講した後に免許証の更新になります。
年齢での区分(75歳以上の場合)
自動車運転免許証の更新時の段階で75歳以上の場合は、“認知機能検査”を受ける必要があります。
この認知機能検査の結果次第で以下の3つに分類されます。
- 第1分類・・・記憶力・判断力が低くなっている方(認知症のおそれがある方)
- 第2分類・・・記憶力・判断力が少し低くなっている方(認知機能が低下しているおそれがある方)
- 第3分類・・・記憶力・判断力に心配ない方(認知機能が低下しているおそれがない方)
認知機能検査結果が“第1分類”の場合
“認知機能検査”の結果が第1分類の場合は、“臨時適性検査”の実施、もしくは“医師の診断書の提出”が必要になります。
認知機能検査結果が“第2分類”or“第3分類”の場合
“認知機能検査”の結果が、第2分類もしくは第3分類の場合に受講する“更新時における高齢者講習”についてですが、その内容や講習時間は認知機能検査での結果によって以下のように変わってきます。
- 第2分類…高齢者講習(3時間)
- 第3分類…高齢者講習(2時間)
第2分類の方を対象とした3時間の高齢者講習の内容としては、
- DVDによる交通ルールや安全運転に関する知識の確認と指導員による運転に関する質問
- 動体視力、夜間視力、視野の測定
- ドライブレコーダーで運転状況を録画し、映像を確認しながら指導員からのアドバイス
- ドライブレコーダーの記録を使用し、運転に関する個人指導と、DVDによる安全運転の学習
…となります。
第3分類の方を対象とした3時間の高齢者講習の内容としては、
- DVDによる交通ルールや安全運転に関する知識の確認と指導員による運転に関する質問
- 動体視力、夜間視力、視野の測定
- ドライブレコーダーで運転状況を録画し、映像を確認しながら指導員からのアドバイス
…となります。
ちなみに、料金についてですが、第2分類の方を対象とした3時間の高齢者講習は¥7550,第3分類の方を対象とした高齢者講習は¥4650になります。
75歳以上で“一定の違反行為”をした場合
免許証更新による運転能力の判断以外に、75歳以上でさらに“一定の違反行為”を起こした場合に義務化されているのが“臨時認知機能検査”になります。
一定の違反行為とされる18項目
まず、この“一定の違反行為”ですが、以下の18項目が対象になります。
- 信号無視(例:赤信号を無視した場合)
- 通行禁止違反(例:通行が禁止されている道路を通行した場合)
- 通行区分違反(例:歩道を通行した場合、逆走をした場合)
- 横断等禁止違反(例:転回が禁止されている道路で転回をした場合)
- 進路変更禁止違反(例:黄の線で区画されている車道において、黄の線を越えて進路を変更した場合)
- しゃ断踏切立入り等(例:踏切の遮断機が閉じている間に踏切内に進入した場合)
- 交差点右左折方法違反(例:徐行せずに左折した場合)
- 指定通行区分違反(例:直進レーンを通行しているにもかかわらず、交差点で右折した場合)
- 環状交差点左折等方法違反(例:徐行をせずに環状交差点で左折した場合)
- 優先道路通行車妨害等(例:交差道路が優先道路であるのにもかかわらず、優先道路を通行中の車両の進行を妨害した場合)
- 交差点優先車妨害(例:対向して交差点を直進する車両があるのにもかかわらず、それを妨害して交差点を右折した場合)
- 環状交差点通行車妨害等(例:環状交差点内を通行する他の車両の進行を妨害した場合)
- 横断歩道等における横断歩行者等妨害等(例:歩行者が横断歩道を通行しているにもかかわらず、一時停止することなく横断歩道を通行した場合)
- 横断歩道のない交差点における横断歩行者等妨害等(例:横断歩道のない交差点を歩行者が通行しているにもかかわらず、交差点に進入して、歩行者を妨害した場合)
- 徐行場所違反 (例:徐行すべき場所で徐行しなかった場合)
- 指定場所一時不停止等 (例:一時停止をせずに交差点に進入した場合)
- 合図不履行 (例:右折をするときに合図を出さなかった場合)
- 安全運転義務違反 (例:ハンドル操作を誤った場合、必要な注意をすることなく漫然と運転した場合)
75歳以上で上記の“一定の違反行為”をした場合、“臨時認知機能検査”を受けなければなりませんがその結果次第では“臨時高齢者講習”を受ける義務が発生します。
“臨時高齢者講習”の受講義務が発生する場合について
臨時高齢者講習を受ける義務が発生する結果は、
- 75歳以上で“認知機能検査”の結果が“第1分類”のため医師による臨時適正検査を受けたが、認知症と診断されなかった場合
- 75歳以上で“一定の違反行為”があり、“臨時認知機能検査”の結果が“第1分類”のため医師による医師による臨時適正検査を受けたが認知症と診断されなかった場合
- 直近の認知機能検査と比較して結果が悪化した場合
…の3つのケースになります。
またこの2時間の“臨時高齢者講習”の内容についてですが、
- ドライブレコーダーで運転状況を録画し、映像を確認しながら指導員からのアドバイス
- ドライブレコーダーの記録を使用し、運転に関する個人指導と、DVDによる安全運転の学習
…となります。
まとめ
今回は認知症高齢者の方の自動車運転免許証の更新の流れ、そしてその際に受講する高齢者講習について解説しました。
振り返ってみてみると、非常に複雑ですね。
年齢による運転免許証更新においては、“70歳~74歳”or“75歳”という年齢での区分と、“認知機能検査”による区分、そして“一定の違反行為”による臨時的な措置…の3つの分け方によって自動車運転の可否判断の流れが変わってきます。
高齢者の方の自動車運転能力を評価し、支援する立場である作業療法士は、この一連の流れもしっかりと把握しておく必要があると言えますね。