ABPI(足関節上腕血圧比)は、下肢の血流状態を評価する非侵襲的な検査で、下肢虚血や動脈硬化のリスクを判断するために用いられます。
本記事では測定方法や注意点について解説します。
ABPI(Ankle-Brachial Pressure Index)とは
ABPI(Ankle-Brachial Pressure Index、足関節上腕血圧比)は、下肢の虚血の程度を評価するための検査方法です。
この検査では、両腕(上腕)と両足首(足関節)の血圧を測定し、足関節の血圧を上腕の血圧で割った値がABPIとなります。
ABPIの正常値は1.0から1.4で、0.9以下の場合には下肢の虚血が示唆されますが、糖尿病や透析患者では動脈の石灰化のために実際より高い値が出ることがあります。
検査は非侵襲的で、痛みもなく、患者はベッドに横たわっているだけで10分程度で終了します。
この検査は下肢閉塞性動脈硬化症(PAD)の診断にも使用され、ABIの異常値は心血管イベントの高リスク状態の評価に有用です。


ABPIの測定方法
ABPIの測定方法は次の通りです。
- 患者に仰向けで寝てもらう
- 上腕の血圧を測定する
- 足関節の血圧を測定する
- 足関節上腕血圧比(ABI)を計算する
以下にそれぞれ解説します。
患者に仰向けで寝てもらう
ABPIの測定は、患者が仰向けで平らな所に寝ている状態から始まります。
この姿勢により、腕や足が心臓の高さに保たれ、血圧測定の精度が確保されます。
心臓の高さに保つことで、重力の影響を最小限に抑え、正確な血圧値を得ることが可能です。
この段階は、全体の測定の信頼性を保証するために非常に重要です。
上腕の血圧を測定する
まず、患者の左腕に血圧計のカフ(腕帯)を巻きます。
次に、上腕動脈の拍動上に聴診器の膜面(丸い部分)を当てます。
カフを膨らませて圧力を加え、上腕の収縮期血圧を測定します。
その後、カフの空気をゆっくりと抜き、再び拍動音が聞こえ始めた時点の圧力を記録します。
この手順により、上腕の正確な収縮期血圧が得られ、後の計算に用いる基準値が確定します。
足関節の血圧を測定する
次に、血圧計のカフを患者の左足首に巻きます。
足背動脈(DP動脈)の場所を探し、その圧力を記録します。
続いて、後脛骨動脈(PT動脈)を見つけ、その圧力も記録します。
足関節の血圧は、これら二つの動脈の圧力のうち高い方を採用します。
これにより、足関節の血圧を正確に把握し、ABPI計算に必要なデータが揃います。
足関節上腕血圧比(ABI)を計算する
記録した足関節の血圧のうち、高い方を選びます。
次に、その足関節の収縮期血圧を上腕の収縮期血圧で割ります。
この計算により、ABPIが得られます。
この値は、下肢の血流状態を評価するために非常に重要で、下肢の虚血の程度や動脈硬化のリスクを判断するのに用いられます。
非侵襲的なこの検査は、短時間で正確な診断情報を提供します。


ABPI測定時の注意点
ABPI測定時の注意点としては…
- 服装
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 人工透析シャントやリンパ節郭清後の方
- 患者の動作
…などがあげられます。
それぞれ解説します。
服装
ABPIの測定には両上腕と両足首の血圧を測定するため、上腕と足首が出しやすい服装で来院することが重要です。
厚手の服や四肢を締め付けるような下着は避けるべきです。
これにより、血圧計のカフ(腕帯)を適切に装着し、正確な血圧測定を行うことができます。
適切な服装を選ぶことで、測定の効率が向上し、患者の快適さも確保されます。
深部静脈血栓症(DVT)
下肢に深部静脈血栓症(DVT)がある場合は、検査の前に必ず医師に知らせるようにしてください。
DVTがある場合、血圧測定時のカフの圧迫が血栓を移動させるリスクがあるため、特別な注意が必要です。
事前にDVTの有無を確認することで、安全に配慮した測定が行え、患者の健康を守ることができます。
人工透析シャントやリンパ節郭清後の方
人工透析シャントがある方や、乳がんなどによるリンパ節郭清後の方など、特定の部位で血圧測定ができない方も、検査の前に必ず医師に伝えてください。
これにより、血圧測定時に適切な部位を選択し、誤った測定や不必要なリスクを避けることができます。
医師や他の医療スタッフがこれらの情報を把握することで、より安全かつ正確な検査が実施されます。
患者の動作
検査中、患者さんは動いたり、声を出さないようにすることが求められます。
動作や話し声が血圧測定に影響を与え、正確な結果を得る妨げとなる可能性があります。
静かにリラックスした状態を保つことで、安定した血圧測定が可能となり、正確なABPIの値を得ることができます。
この注意点を守ることで、検査の精度と信頼性が向上します。

