Functional Assessment for Control of Trunk(FACT) – 方法・検査項目・関連研究について

検査

FACTは、体幹の制御と機能を評価する臨床的ツールで、脳卒中患者のリハビリテーションに特に有効です。
本記事では方法、検査項目、関連研究などについて解説します。


Functional Assessment for Control of Trunk(FACT)とは?

Functional Assessment for Control of Trunk(FACT)とは、臨床的な体幹機能検査のひとつになります。
この評価は特に脳卒中患者において体幹機能の重要性を考慮して開発されました。

従来、体幹機能に関する評価としては、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)の体幹項目やTCT(Trunk Control Test)などがありましたが、実際の理学療法において具体的な介入の選択に結び付けることが難しいという問題がありました。
そのため、FACTは治療指向的な評価指標として開発された…という経緯があります。

日本語訳

Functional Assessment for Control of Trunk(FACT)を日本語に訳すと、「体幹制御のための機能的評価」となります。
この用語は、体幹の機能や制御能力を評価するための臨床的ツールを指しています。

方法

FACTの測定方法ですが、ここでは…

  • 測定姿勢
  • 測定場所
  • 検査手順

…について解説します。

測定姿勢

測定姿勢はFACT評価の基礎となります。
ここでは、被評価者は可能な限り両下肢の足底面を床に接地させた端坐位で行います。
この姿勢は体幹の機能と制御能力を適切に評価するために重要です。
端坐位姿勢は体幹の安定性と筋力をテストするのに理想的であり、上半身と下半身のバランスや協調を評価するのに役立ちます。

また、足底面を床に接地させることで、より現実的な日常生活の状況を模倣し、体幹の動きやバランスを正確に評価することが可能になります。

測定場所

測定場所の選定もFACTの精度に大きく影響します。
測定は40~45cmの高さで一定の硬さを持つ座面(治療台やベッドなど)で実施されます。
この高さと硬さの座面は、体幹の動きや反応を正確に捉えるために重要です。
適切な硬さの座面は、体幹が必要とする筋肉の使用を促し、安定性やバランスを評価する際の信頼性を高めます。

また、治療台やベッドのような標準化された測定環境を使用することで、検査結果の一貫性と再現性が保証され、異なる患者や異なる時間での評価においても比較可能なデータが得られます。

検査手順

検査手順はFACTの核心部分です。
ここでは、1から10までの項目を順に実施し、各項目に対する患者のパフォーマンスを評価します。
FACTは患者の最大能力を測定するために設計されており、各項目を3回試行し、その中での最大パフォーマンスを代表値として使用します。
このアプローチにより、患者がその時点で持っている体幹の機能と制御能力のピークを捉えることができます。
また、複数回の試行を通じて、一貫性のあるパフォーマンスを確認することも可能です。
この手順は、短期間の間に患者の能力を正確に把握するために重要であり、リハビリテーションや治療計画の策定に役立つ具体的なデータを提供します。
項目の実施順序や評価方法の標準化により、各項目の結果は比較可能となり、治療の進行状況や改善の度合いを客観的に評価するのに役立ちます。
FACTは体幹の機能を総合的に評価するため、各項目は体幹の異なる側面をテストするように設計されています。

これにより、患者の体幹に関する強みと弱みを全体的に理解し、個別化された治療アプローチを導くことができます。

検査項目

FACTの検査項目としては…

  • 静的座位保持能力(上肢支持利用)
  • 静的座位保持能力(上肢支持不使用)
  • 下方へのリーチに伴う動的座位保持能力
  • 臀部移動に伴う動的座位保持能力
  • 側方への重心移動に伴う動的座位保持能力
  • 下肢拳上時に伴う動的座位保持能力
  • 両下肢拳上に伴う動的座位保持能力
  • 骨盤の前後移動に伴う動的座位保持能力
  • 体幹回旋に伴う動的座位保持能力
  • 上肢拳上に伴う動的座位保持能力

…になります。

FACTの関連研究

ここではFACTに関する研究について解説します。

脳卒中の機能的転帰を予測するFACTの検証

FACTは脳卒中後の機能的転帰を予測することがわかった。
FACTは、機能的自立度評価(FIM)の獲得および効率と有意な関連を示し、脳卒中患者における体幹機能障害の評価およびリハビリテーション転帰の予測に有用であることが示された1)

高齢者におけるFACTと身体機能

FACTは、高齢者の歩行速度、バランス、下肢筋力などの身体機能と中程度の相関があった。
このことは、FACTが高齢者集団における動作の自立および関連する身体機能を評価するための適切なツールであることを示唆している2)

脳卒中患者における体幹機能と皮質経路

脳卒中患者における体幹機能と皮質網様体路の関係を分析した研究では、FACTのような従来の体幹機能評価では、皮質網様体路損傷に関連する体幹機能の質的側面を十分に把握できない可能性があることが明らかになった3)

非外傷性脊髄損傷におけるFACT

FACTは脊髄梗塞の症例における体幹機能の評価に使用され、脳卒中以外への応用可能性を示している。
この研究では、リハビリ介入後の体幹機能改善をモニターするためのFACTの使用が強調されている4)

脳卒中患者におけるFACTと排泄介助

脳卒中患者における排泄介助の必要性は、FACTで評価される体幹機能と関連することが明らかになり、脳卒中患者の日常動作における自立性の評価におけるFACTの関連性が示唆された5)

FACTは、特に脳卒中患者の体幹機能を評価するための有効なツールってことだね!
機能的転帰の予測能力を示し、様々な身体機能と相関があることから、リハビリテーションにおいて有用なツールといえますね!

関連文献

参考

  • 1)Sato, K., Maeda, K., Ogawa, T., Shimizu, A., Nagami, S., Nagano, A., Murotani, K., Inoue, T., & Suenaga, M. (2020). The functional assessment for control of trunk (FACT): An assessment tool for trunk function in stroke patients.. NeuroRehabilitation. https://doi.org/10.3233/nre-201533.
  • 2)Shiba, T., Sawaya, Y., Kawashima, K., Ishizaka, M., & Kubo, A. (2020). Relationships between Functional Assessment for Control of Trunk (FACT) and Physical Functions in Community-dwelling Elderly Using the Long-term Care Insurance Service. Rigakuryoho Kagaku. https://doi.org/10.1589/rika.35.443.
  • 3)Kubota, K., Tamari, M., Hayakawa, R., Wakisaka, N., Endo, M., & Maruyama, H. (2019). Relationship between trunk function and corticoreticular pathway in stroke hemiplegic patients: analysis using probabilistic tractography. Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science. https://doi.org/10.11336/jjcrs.10.96.
  • 4)Michibata, A., Haraguchi, M., Murakawa, Y., & Ishikawa, H. (2022). Electrical stimulation and virtual reality-guided balance training for managing paraplegia and trunk dysfunction due to spinal cord infarction. BMJ Case Reports, 15. https://doi.org/10.1136/bcr-2021-244091.
  • 5)Sato, A., Okuda, Y., Fujita, T., Kimura, N., Hoshina, N., Kato, S., & Tanaka, S. (2016). Cognitive and physical functions related to the level of supervision and dependence in the toileting of stroke patients.. Physical therapy research, 19 1, 32-38 . https://doi.org/10.1298/PTR.E9904.
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