痛みを検査する方法でも、日常生活動作と関連付けて評価する方法は、このBRTPが代表的なものと言えます。
今回はこのBRTPの方法や点数、注意点について解説します。
疼痛行動評価表(BRTP)とは?
疼痛行動評価表(BRTP:Behavioral Responses to Pain)とは、慢性痛の患者の痛みを行動によって測定し評価するための検査ツールになります。
開発背景
BRTPは、1996年に心理学者である“クレア・フィリプス(Clare Philips)”と“スタンリー・ラフマン(Stanley Rachman)”によって発表されました。
方法
BRTPは痛みに影響を与えると考えられる38項目の日常生活動作についての質問に、それぞれ…
- いつもする
- たいていする
- 全然しない
…の3段階の選択肢から1つを選択して点数をつけていく方法になります。
項目
38の日常生活動作についての各項目は以下の通りになります。
- 1.物を持ち上げるのをさける
- 2.横になる/休けいする/寝る
- 3.顔をしかめる/まゆをひそめる
- 4.外食するのをさける
- 5.痛みのあることを友人に話す
- 6.アルコールを飲む
- 7.庭の手入れをさける
- 8.医師にもらった薬を飲む
- 9.(痛くて)泣く
- 10.パーティや集まりに行くのをさける
- 11.家事をするのをさける
- 12.電車やバスに乗るのをさける
- 13.マッサージをしてもらう
- 14.立つのをさける
- 15.仕事に行くのをさける
- 16.痛いところをかばう/痛くて声を出す
- 17.痛みのあることを家族に話する
- 18.水泳に行く
- 19.痛いところをあたためる
- 20.市販の痛み止めを飲む
- 21.映画館へ行くのをさける
- 22.車での旅行をさける
- 23.買い物に行くのをさける
- 24.姿勢をかえる
- 25.車をそうじするのをさける
- 26.歩くのをさける
- 27.明るい光をさける
- 28.性生活をさける
- 29.来客の訪問をさける
- 30.余分な家事をさける
- 31.動作をゆっくりにする
- 32.ものを運ぶのをさける
- 33.大きな物音をさける
- 34.痛いところをさすったり、こすったりする
- 35.人の家を訪問するのをさける
- 36.料理をするのをさける
- 37.からだを曲げるのをさける
- 38.階段を使うのをさける
点数配点とカットオフ値について
BRTPの各回答選択肢による点数配点はそれぞれ、
- 2点(いつもする)
- 1点(たいていする)
- 0点(全然しない)
…になり、全部2点だと76点(満点)になります。
また、もう一つの採点方法は、選んだ項目の数を得点にする方法で、この場合満点は38点になります。
カットオフ値について
BRTPのカットオフ値についてはVAS同様その被験者の痛みの程度の変化を追う検査のため、厳密に「何点」というカットオフ値は設けられていません。
注意点
BRTPの点数は転倒による骨折や、手術による痛みといった急性期の場合は痛みの強さに比べて低めにつけられる傾向があるようです。
また逆に腰痛といった慢性痛の場合は高めにつけられる傾向があるようです。
被験者の痛みの原因疾患や現在どの時期になるのか、といった情報の把握をしたうえでBRTPの実施に踏み込んだほうがよいといえます。
Q:飲酒の項目があるが、普段お酒を飲まない場合はどう答えればよいか?
38の質問項目の中には、被験者の生活上行わないような項目もある場合があります(飲酒etc)。
この場合は「もし○○の場合だったらどうしてたか?」という想像で採点する必要があります。
例:被験者は飲酒の習慣はないが、「もし、飲酒をするひとだったら・・・」と想像してスコアをつけます。
参考
S.A., Holmes., S.A., Holmes., A., Quinlan., M.E., Pierce. (2022). Behavioral markers of pain: Understanding the cognitive, motor, and societal interactions in the pain experience. 349-358. doi: 10.1016/B978-0-12-820589-1.00031-2