メイソン‐椎野変法 – 検査目的・評価方法・カットオフ値・注意点について

用語

メイソン‐椎野変法は、慢性関節リウマチ患者の活動性を評価する自己記入式ツールです。
短時間で実施可能で、血液検査を必要とせず、作業療法計画の立案に役立ちます。
活動性を数値化し、経時的な変化を追跡できる点が特徴です。

本記事ではこのメイソン‐椎野変法について解説します。


メイソン‐椎野変法とは?

メイソン‐椎野変法は、関節リウマチ患者の機能評価を目的とした自己記入式の評価法です。
この方法は、1992年にJH Masonらが提唱した「関節リウマチの疾患活動性の迅速評価(RADAR)」を基盤としています。
椎野泰明と白浜正人によって改良され、日本の実情に適した評価方法として発展しました。
メイソン‐椎野変法は、患者自身が日常生活動作(ADL)の困難さを記録する形式を採用しており、そのデータは疾患活動性の把握や治療効果の評価に活用されます。

また、この評価法は、ADLとの妥当性が確認されており、関節リウマチ患者の包括的な状態評価に役立つ信頼性の高いツールとして広く認識されています。

メイソン‐椎野変法は、患者自身が疾患活動性を簡便に記録できる自己記入式評価法であり、医療現場での迅速な状態把握に有用なんだ!
ADLとの妥当性が確認されているため、治療方針の調整や経過観察に信頼性の高いツールとして活用されているんですね!

メイソン‐椎野変法の特徴

メイソン‐椎野変法の主な特徴としては…

  • 自己記入式の評価法
  • 約5分程度で実施可能
  • 血液検査を必要としない
  • 患者の活動性の変化をリアルタイムに把握できる
  • 作業療法計画の立案に即座に役立つ
  • 100点満点で評価され、点数が高いほど活動性が低い

…があげられます。
それぞれ解説します。

自己記入式の評価法

メイソン‐椎野変法は、患者が自分自身で症状や活動性の状況を記入する形式を採用しています。
これにより、患者自身の主観的な感覚を反映した評価が可能となり、医療者が把握しづらい症状や日常生活の課題を明らかにできます。
また、評価の簡便さが患者の負担を軽減し、実施率を高める一助となっています。
この形式は、患者の自立を促し、病状への意識向上にもつながります。

さらに、自己記入式であることで、紙面やデジタル形式など、さまざまな方法で利用可能な柔軟性も特徴です。

約5分程度で実施可能

メイソン‐椎野変法は、短時間での実施が可能で、忙しい診療現場やリハビリの合間でも容易に取り入れられます。
患者が記入に要する時間はおよそ5分程度であり、医療スタッフの負担を軽減しながら効率的に情報収集ができます。
この短時間での評価は、繰り返し実施することが容易で、疾患活動性の経時的変化を観察するのにも適しています。

また、患者が負担なく取り組めることで、評価の継続性を保つことができます。

血液検査を必要としない

この評価法は、血液検査などの医療的な検査を必要とせず、患者の症状や日常生活の状況を直接反映します。
これにより、費用を抑えつつ、迅速かつ簡単に患者の状態を把握できるのが特徴です。
特に、血液検査を行えない状況や、定期的な検査が難しい患者にも適応可能です。
また、検査結果を待つ必要がないため、評価と治療方針の決定が迅速に行えるという利点があります。

このシンプルさが、臨床現場での広範な利用を可能にしています。

患者の活動性の変化をリアルタイムに把握できる

メイソン‐椎野変法は、患者の日常生活の活動性や症状の変化をリアルタイムで評価できる点が大きな魅力です。
これにより、患者自身が気づきにくい変化や、医療者が見落としがちな微細な変動を捉えることができます。
このリアルタイムの評価は、疾患活動性の増減を即座に確認し、治療計画の調整に役立ちます。

また、治療効果を評価するための基準としても信頼性が高く、継続的なモニタリングが可能です。

作業療法計画の立案に即座に役立つ

この評価法は、作業療法士が患者の状態を的確に把握し、個々のニーズに合わせた計画を立案する際に非常に有用です。
患者が記入した結果を基に、日常生活動作の制限や支援の必要性を具体的に分析することが可能です。
また、評価が短時間で行えるため、診療時間内に作業療法計画を迅速に策定でき、治療の質を向上させます。

このように、患者の状態と目標設定を効率的に結びつけるツールとして活用されています。

100点満点で評価され、点数が高いほど活動性が低い

メイソン‐椎野変法は100点満点のスコア形式を採用しており、点数が高いほど疾患活動性が低いことを示します。
このスコア形式により、患者の活動性を数値として簡単に表現でき、医療スタッフ間での共有や記録が容易になります。
また、点数の増減を追跡することで、治療効果や疾患活動性の変化を一目で把握できるのも利点です。

患者にとっても、点数を通じて自分の状態を客観的に理解する助けとなり、モチベーション向上につながります。

メイソン‐椎野変法は、短時間で自己記入式の評価が可能であり、血液検査を必要としない手軽さが特徴なんだ!
評価結果をリアルタイムで把握し、作業療法計画の立案や治療効果の測定に直結する実用性の高いツールなんですね!

メイソン‐椎野変法の目的

メイソン‐椎野変法の目的としては…

  • 慢性関節リウマチ患者の活動性を評価すること
  • 血液検査を必要とせずに患者の状態を把握すること
  • 患者の活動性の変化をリアルタイムに評価すること
  • リハビリテーション、特に作業療法計画の立案に即座に役立つ情報を提供すること
  • 患者自身による自己評価を通じて、短時間で効率的に情報を収集すること
  • 患者の日常生活に影響する症状を包括的に評価すること
  • 患者の活動性を数値化し、経時的な変化を追跡すること

…があげられます。
それぞれ解説します。

慢性関節リウマチ患者の活動性を評価すること

メイソン‐椎野変法は、関節リウマチ患者の疾患活動性を的確に評価することを目的としています。
活動性の評価により、関節の炎症や腫れ、痛みなどの状態を把握し、患者の全体的な健康状態を視覚化します。
この評価は、疾患の進行度や治療効果の確認に役立ち、個別の治療計画を調整する基盤となります。
また、活動性の数値化により、患者と医療者が共通の指標を用いて状態を理解しやすくなります。

評価結果は、患者の生活の質向上を目指した適切な介入を行うための重要な情報となります。

血液検査を必要とせずに患者の状態を把握すること

この評価法は血液検査を必要とせず、患者自身の記録に基づいて状態を把握することが可能です。
これにより、診療コストを抑えつつ、簡便に疾患活動性を評価できるという利点があります。
特に、頻繁な血液検査が難しい患者や、リソースが限られた環境においても実施可能な評価法として有効です。
また、血液検査を待つ必要がないため、迅速に結果を得られる点も臨床現場で重宝されています。

この方法は、患者と医療者の双方にとって負担を軽減するシステムとなっています。

患者の活動性の変化をリアルタイムに評価すること

メイソン‐椎野変法では、患者の活動性や症状の変化をリアルタイムで捉えることが可能です。
これにより、治療の効果や疾患の進行を迅速に確認でき、必要に応じて即座に対応策を講じることができます。
特に、短期間での状態の変化が患者の生活に与える影響を評価する際に有用です。
患者自身の記入結果を基に活動性を追跡することで、医療者が見落としがちな小さな変化にも対応できます。

このリアルタイムの評価能力は、個別化されたケアを提供する上で大きな助けとなります。

リハビリテーション、特に作業療法計画の立案に即座に役立つ情報を提供すること

メイソン‐椎野変法は、作業療法士が患者の状態を詳細に把握し、個々のニーズに基づいたリハビリ計画を立案するための有力なツールです。
患者の自己評価に基づく結果は、日常生活動作や職業活動における制限を理解する助けとなります。
評価結果を即座に計画に反映できるため、効率的な介入が可能となります。
この方法は、患者の目標達成をサポートする具体的な治療戦略を設計する上で重要な役割を果たします。

また、患者の意識を高め、リハビリへの積極的な参加を促す効果も期待されます。

患者自身による自己評価を通じて、短時間で効率的に情報を収集すること

メイソン‐椎野変法は、患者が自分で評価を記入する形式を採用しており、短時間で重要な情報を収集できる効率的な方法です。
このプロセスは、患者の負担を軽減すると同時に、医療者が診療に必要なデータを迅速に得られる利点があります。
自己記入式であるため、患者が自分の症状や制限について深く考える機会にもなり、自己理解を促進します。
また、評価が簡単であるため、診療の合間やリハビリのセッション中にも容易に実施できます。

このように、患者中心の評価アプローチとして非常に実用的です。

患者の日常生活に影響する症状を包括的に評価すること

この評価法は、患者の日常生活に直接影響を与える症状を包括的に把握することを目的としています。
関節の腫れや痛み、手指のこわばり、全体的な体調といった要素を一度に評価できるため、疾患の全体像を理解するのに役立ちます。
この包括的な評価は、疾患の影響がどのように患者の生活に反映されているかを明確にする手段となります。
評価結果を基に、患者の生活の質向上を目指した適切な治療計画が立案されます。

また、患者の主観的な症状と医療者の客観的な観察を組み合わせることで、より正確な診断と治療が可能となります。

患者の活動性を数値化し、経時的な変化を追跡すること

メイソン‐椎野変法は、患者の活動性を数値として表現することで、経時的な変化を追跡するツールとして機能します。
この数値化された評価は、患者自身にも状態の改善や悪化を直感的に理解させる効果があります。
また、医療者が診療記録や報告書を作成する際にも役立ちます。
活動性の変化を継続的にモニタリングすることで、治療の有効性を客観的に評価することが可能となります。

この数値化の利点により、患者と医療者が共有できる目標設定が容易になり、治療の一貫性が向上します。

メイソン‐椎野変法は、患者の活動性や症状をリアルタイムで評価し、リハビリ計画に直結する情報を効率的に提供するんだね!
血液検査を不要とする簡便さと、数値化による経時的な変化の追跡が大きな利点なんですね!

メイソン‐椎野変法の項目について

メイソン‐椎野変法は主に4つの質問によって構成されています。

  • 被験者の関節について
  • 手指のこわばりについて
  • 現在の状態について
  • 関節毎の痛みや腫れについて

以下にそれぞれ解説します。

被験者の関節について

Q:あなたの関節について答えてください。(線上にバツ印をつけてください)
1)本日の関節の腫れの程度はどのくらいですか?(10)
2)本日の関節の痛みはどれくらいですか?(10)

手指のこわばりについて

Q:今朝、目か覚めたとき、手指が動かしにくくこわばっていましたか?
1)いいえ
2)はい

こわばった感じの持続時間はどれくらいですか?1つだけ〇印をつけてください。

時間 点数
30分以内 0
30分~1時間 2
1~2時間 4
2~4時間 6
4時間以上 8
1日中 10

③現在の状態について

Q:本日あなたの状態を表している項目を1つ選んで〇印をつけて下さい。

状態 点数
不自由なく通常の仕事ができる 0
不快感はあるが普通の仕事ができる 4
通常の仕事はほとんとできない 7
寝たきりあるいは座ったきりでほとんどあるいはまったく自分のことができない 10

④関節毎の痛みや腫れについて

Q:本日の関節の痛みや腫れの程度を下記の関節ごとに左右ともに、0~3の1つに〇印をして下さい。

関節
0 1 2 3 0 1 2 3
0 1 2 3 0 1 2 3
0 1 2 3 0 1 2 3
0 1 2 3 中手指関節 0 1 2 3
0 1 2 3 近位指関節 0 1 2 3
0 1 2 3 0 1 2 3
0 1 2 3 0 1 2 3
0 1 2 3 0 1 2 3
0 1 2 3 足の甲 0 1 2 3
0 1 2 3 足趾 0 1 2 3

メイソン‐椎野変法の点数とカットオフ値について

メイソン‐椎野変法は100点満点で、その点数が高ければ高いほど活動性としては低いことになります。
またメイソン‐椎野変法はあくまで慢性関節リウマチの被験者の“現在の活動性”を数値化した評価法なので、カットオフ値というものは特に決められていないようです。

進行性の疾患だからこそ、経時的にモニタリングする必要があるだろうね!
だからこそ定量的な評価を行うことも重要でしょうね!

メイソン‐椎野変法の注意点

メイソン‐椎野変法を使用する際の主な注意点は以下の通りになります。

  • 患者の自己申告に基づく
  • スコアの解釈に注意が必要
  • カットオフ値が設定されていない
  • 長期予後予測には不向き
  • 患者の記入能力に左右される
  • 患者間比較には慎重を要する
  • 正確な評価には説明が必要
  • 客観的指標と併用が有効

それぞれ解説します。

患者の自己申告に基づく

メイソン‐椎野変法は、患者の自己申告に依存する評価法であり、結果が主観的である点に注意が必要です。
患者の認知的偏りや自己認識の差によって、症状が過小または過大に評価される可能性があります。
他の臨床所見や客観的データと組み合わせて解釈することで、正確な理解を目指すことが重要です。
特に治療方針の決定には、多角的な評価が求められます。

自己申告を尊重しながらも、医療者による補完的な判断が必要です。

スコアの解釈に注意が必要

評価は100点満点形式で、点数が高いほど疾患活動性が低いことを示します。
誤解を防ぐために、スコアの意味を患者や医療スタッフに事前に説明することが重要です。
スコアの変動が何を示しているのかを明確にすることで、評価結果を正確に活用できます。
特に、患者にとっては改善や悪化を直感的に理解しやすいような補足資料が有効です。

また、スコアを一面的に捉えず、全体の文脈で判断する必要があります。

カットオフ値が設定されていない

メイソン‐椎野変法では、特定のスコアを基準としたカットオフ値が存在しません。
そのため、一回の評価ではなく、経時的なスコア変化を追跡することが重要です。
患者ごとに異なる基準で評価を行い、治療効果や疾患の進行を観察することが推奨されます。
定期的に記録を取ることで、より正確な状況把握が可能となります。

また、個別のデータをもとにしたフィードバックが患者との信頼関係を築く助けとなります。

長期予後予測には不向き

この評価法は、現在の活動性を数値化することに優れていますが、長期的な予後の予測には適していません。
疾患進行や合併症リスクを直接評価するツールではないため、他の検査やデータと併用する必要があります。
短期的な状態把握には有効であるものの、長期的な治療戦略を立てる際には補助的な役割として活用されます。
患者や家族にも、この評価の範囲を正しく理解してもらうことが重要です。

適切な情報提供が信頼性向上につながります。

患者の記入能力に左右される

評価結果は、患者の理解力や記入能力に影響を受ける可能性があります。
高齢者や認知機能が低下している患者では、正確な情報が得られにくい場合もあります。
そのため、評価前に十分な説明を行い、必要に応じて医療者がサポートすることが求められます。
評価シートを見やすく設計し、患者が混乱なく記入できるよう配慮することが重要です。

また、記入後に内容を確認し、補足的な質問を行うことで、信頼性が向上します。

患者間比較には慎重を要する

主観的評価であるため、患者間のスコアを直接比較することは適切ではない場合があります。
同じスコアでも、個々の背景や生活環境により異なる意味を持つ可能性があります。
評価を解釈する際には、個別の患者の文脈を重視し、画一的な判断を避けるべきです。

また、評価結果を共有する際には、個別の治療目標に焦点を当て、患者の特性に応じたフィードバックを行うことが重要です。

正確な評価には説明が必要

短時間で実施可能な評価法ですが、患者が正しく理解して記入できるように十分な説明を行うことが不可欠です。
例えば、評価項目やスコアの意味について簡潔に説明し、記入ミスを防ぐことが大切です。
記入時には、患者が焦らないように落ち着いた環境を整えることも効果的です。

また、記入後に結果を確認し、疑問点を解消するプロセスを設けることで、評価の信頼性が高まります。

客観的指標と併用が有効

メイソン‐椎野変法は主観的評価法であるため、血液検査や画像診断などの客観的指標と組み合わせて使用することで、包括的な評価が可能になります。
特に、疾患活動性や炎症状態を多角的に把握するためには、両者の併用が効果的です。
このような方法により、評価結果の精度が向上し、治療方針をより適切に策定できます。

また、患者に対しても、主観と客観の両面からの説明が理解を深める助けとなります。

メイソン‐椎野変法は、簡便で患者の主観を反映した評価が可能ですが、主観的性質ゆえに客観的データとの併用や解釈時の注意が求められるんだね!
スコア変化を経時的に追跡しつつ、適切な説明と補助で評価の精度を高めることが重要ですね!

参考

1)Mason JH, Anderson JJ, Meenan RF, Haralson KM, Lewis-Stevens D, Kaine JL. The rapid assessment of disease activity in rheumatology (radar) questionnaire. Validity and sensitivity to change of a patient self-report measure of joint count and clinical status. Arthritis Rheum. 1992 Feb;35(2):156-62. doi: 10.1002/art.1780350206. PMID: 1734905.

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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
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