意識障害とは?【定義と発生機序について】

リハビリテーションの現場で遭遇することが多い”意識障害”。
本記事では…

  • 意識障害の定義
  • 意識障害の発生機序

…について解説します。

意識障害の定義

意識障害(disturbance of consciousness)とは、意識のレベルや内容に異常がある状態を指します。
これにより、正常な知覚、認識、判断、思考が困難になります。

意識が持つ2つの側面

意識障害…について掘り下げる前に、まずそもそも”意識”とはなにを意味するのでしょうか?

結論から言えば、意識とは自分の存在や周囲の環境に気づき、反応できる状態のことです。
意識には、”覚醒レベル”と”意識内容”という二つの側面があります。

覚醒レベルとは、目を開けたり話したりすることができる程度のことです。
これは脳幹にある上行性網様体賦活系という神経回路が関係しています。

また、意識内容とは、自分や外界の状況を正しく認知し、思考や判断ができる程度のことになります。
これは大脳皮質の連合野が関係しています。

意識障害の発生機序

では、意識障害とはどのような機序で発生するのでしょうか?

そもそも意識を保持するためには、様々な感覚刺激が上行性脳幹網様体を経由して、視床下部や視床に至り、覚醒系と呼ばれる神経回路を形成します。
この覚醒系は大脳皮質の興奮を保持するために重要な役割を果たします。

そこから大脳皮質の各所へ覚醒刺激が送られることが必要になります。
大脳皮質は、意識の高次的な側面を担う部位になります。

つまり、意識が障害されるということは…

  1. 感覚刺激の欠如(入力の障害)
  2. 上行性脳幹網様体の損傷などによる覚醒系の障害(伝達の障害)
  3. 大脳皮質の障害(受容の障害)

…を意味します。
それぞれ少し踏み込んで解説します。

感覚刺激の欠如

“感覚刺激の欠如”は、意識障害の発生機序の一つとして重要な要素です。

感覚刺激は私たちが外部から受け取る視覚、聴覚、触覚などの情報を指します。
これらの感覚刺激は、上行性脳幹網様体を通じて脳に伝えられ、意識の形成と維持に重要な役割を果たしています。

感覚刺激の欠如が生じると、脳は外部の情報を適切に処理することができず、意識のレベルが低下する可能性があります。
例えば、昏睡状態や無反応状態など、意識の喪失や障害が現れることがあります。

この”感覚刺激の欠如”はさまざまな原因によって引き起こされます。
例としては、外傷性脳損傷、中枢神経系の疾患、薬物の影響、代謝異常、酸素不足などが挙げられます。
これらの要因によって、感覚刺激が遮断されるか、感覚器官や神経経路に障害が生じることで、脳への情報伝達が妨げられます。

そのため、昏睡や閉じ込め症候群などの意識障害の患者に対しては、感覚刺激を与えることが重要とされています。

感覚を受容する脳の部位は、感覚の種類によって異なります。
一般的には、感覚情報は視床で中継された後、大脳皮質の特定の領域に到達します。
この領域を感覚野と呼びます。

例えば、体性感覚(触覚、痛覚、温度覚など)は中心後回、視覚は後頭葉の一部、聴覚は側頭葉の一部にある感覚野に伝わります。
ちなみに嗅覚だけは視床を経由せずに直接大脳皮質に到達します。

上行性脳幹網様体の損傷などによる覚醒系の障害

上行性脳幹網様体は、脳幹にある神経細胞の集まりで、覚醒系と呼ばれる大脳皮質を覚醒状態にするシステムの一部です。
上行性脳幹網様体は、視床や脳幹から様々な感覚刺激などの入力を受けて、大脳皮質に活性化信号を送ります。
この信号が途絶えると、意識が低下します。

上行性脳幹網様体が損傷されると、覚醒系が障害されて、意識障害が起こります。
意識障害の程度は、損傷の範囲や重さによって異なります。
例えば、全般発作における意識障害は、上行性脳幹網様体の一時的な機能低下によるものです。

この上行性網様体…厳密にいえば網様体そのものへの損傷の原因ですが、脳ヘルニアによる中枢付近の圧迫や下部脳幹の出血、腫瘍などで起こりやすいとされています。

大脳皮質の障害

大脳皮質は、脳の外側にある層で、様々な情報を処理する場所です。
特に、連合野と呼ばれる部分は、視覚や聴覚などの感覚情報を統合して、自分や外界の状況を把握する役割を担っています。

そうなると、大脳皮質の障害は”意識レベルの低下”だけでなく”意識内容の障害”を引き起こす可能性があります。
例えば、大脳皮質の広範囲が両側性に損傷された場合、入ってくる情報を処理する場所がなくなり、自分や外界に対する反応ができなくなります。
これは昏睡や昏迷と呼ばれる重度の意識障害です。

大脳皮質の障害は、脳卒中や頭部外傷など様々な原因で起こり得ます。

意識障害は大きく改善すべき状態のひとつだから、その原因や発生機序についてはしっかり知っておく必要があるだろうね!
主体的な社会的生活を送るための大前提でしょうからね。

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