APDL・IADLの評価法について【アウトカムにも必要です】

検査

作業療法士はクライアントの自己実現を支援するためには、ADLはもちろんのことさらにその範囲を拡大した“APDL”・“IADL”にも注目しないといけません。
今回はこのAPDL・IADLの評価について解説します。

APDL・IADLの評価法について

APDL、IADLの評価法としては次の5つが主に使用されています。

  • IADL Scale(手段的ADL尺度)
  • 老研式活動能力指標
  • FAI(The Frenchay Activitles index : Frenchay活動指標)
  • CHART(The Craig Handicap Assessment andReporting Techn:que i Craigハンディキャップ評価・報告書式)
  • CIQ(Community integration Questionnaire :地域社会への統合についての質問紙)

以下にそれぞれ解説します。

IADL Scale(手段的ADL尺度)

1969年にLawdonとBrodyによってつくられ,“手段的ADL”という言葉が使われる先駆けとなった尺度がこの“IADL Scale”です。
このIADL Scaleの評価項目としては以下の8つがあげられています。

  • 電話使用
  • 買い物
  • 食事準備
  • 家屋維持
  • 洗濯
  • 乗り物利用
  • 服薬
  • 家計管理

これら8つの評価項目をそれぞれ3~5段階に分けた回答の選択肢の中から選び、点数化します。
その回答の選択肢の内容など、高齢者専用に作られていることからも適用の範囲が限られるのも特徴といえます。

老研式活動能力指標

古谷野らが1986年に初めて発表した指標で、地域に住む高齢者の生活能力を測定することを目的にしています。

  • 手段的自立
  • 知的能動性
  • 社会的役割

…に関する質問があり、「○○できますか?」という形式の質問が7問,「○○していますか?」という形式の質問が3問,「○○することがありますか?」形式の質問が3間で合計13点満点となります。
その回答方法も「はい」「いいえ」のどちらかを選ぶ形式なので、比較的簡単に評価を進めることができます。

また、特徴としては“引退後の高齢者を想定している”ということから「仕事」や「就労」に関する質問はないという点があげられます。
また特にカットオフ値は設けられていません。

FAI

FAI(The Frenchay Activitles index : Frenchay活動指標)はHolbrookとSkllbeckによってつくられ、1983年に初めて発表された評価方法です。
そもそもは脳卒中のアウトカム評価の道具として開発されました。
評価項目としては、

  • 食事の用意
  • 食事の片づけ
  • 選択
  • 掃除、整頓
  • 力仕事
  • 買い物
  • 外出
  • 屋外歩行
  • 趣味
  • 交通手段の利用
  • 旅行
  • 庭仕事
  • 家や車の手入れ
  • 読書
  • 勤労

…の15項目から構成されていて、過去3か月間or6か月間にそれらを行った頻度を尋ねる方式になっています。
回答も「0:していない」「1:週1回未満であるがしている」「2:週1~ 2回程度実施」「3:ほとんど毎日している」から1つを選ぶ方法をとります。

このFAIの特徴としてですが、蜂須賀らによって作成された『日本語版Frenchay Activities lndex自己評価表』のように日本語を含む7か国語に翻訳されています。
ちなみに英国,西ヨーロッパ,オーストラリアなどでは使われているのに対して、米国ではあまり使われていないようです。

CHART

CHART(The Craig Handicap Assessment and Reporting Technique)はWhiteneckら20により1992年に初めて発表されて評価方法です。
WHOによるICIDHを概念基盤としていて、当初は質問項目も全部で27問だったのが、その後認知項目に関する質問も加わり、1996年の改訂版では31プラス1項目となっています。
特徴としては評価書式のなかに採点方法も詳しく書き込まれているので使いやすいという点、障害者の社会的不利(handicap)の測定を最優先の目的に掲げている点があげられます。

またその内容としては、セルフケアからIADL,作業や社会的統合,および経済的自立に至るまですべてを含んでいてそれぞれに配点されていて、社会的不利が全くなければ100点満点になります。
でも、この点数の付け方がかなり特徴的で複雑なことが難点です(苦笑)

CIQ

CIQ(Community integration Questionnaire :地域社会への統合についての質問紙)はWillerらによって発表されました。
評価対象の社会適応度を評価するものなので、目的としては前述した”CHART”に似ている点が多くあります。

ただし、CHART(特に改定前の初期版)はどちらかといえば脊髄損傷のような身体性の障害を想定して作られているのに対して、頭部損傷患者といった高次脳機能障害を有する場合にも使えるものとして使い分けされている報告が多くみられます。
家庭的統合,社会的統合,生産活動への統合に関する合わせて15の質問で構成されていて、その質問項目に対しての実態をたずねるようになっているのが特徴と言えます。

まとめ

今回はAPDL、IADLに関しての5つの評価方法について解説しました。
それぞれ対象者本人や家族と言った代わりの回答者に合わせ構成されていることがわかりました。
またどの評価方法に至っても『している活動』に注目していることからも、その対象の実際の生活上の課題を抽出する…ということを前提として評価する必要があるといえます。

作られた時代が1980年にWHOが提唱したICIDHの時代のため、ICFの“参加”という項目にはあまりフォーカスを当ててはいない印象を受けますが、それでも“社会的不利”を抽出することから見えてくるものもあるはずです。
多角的にクライアントの課題を把握するためにも、こういった評価を使用する必要があるかもしれませんね!

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