高次脳機能障害に対しての作業療法の5段階のプロセスについて【苦手意識を克服するために…】

高次脳機能障害を有するクライアントの支援を行う時、作業療法士としてはどのようなプロセスを踏んでいくのがベストなのでしょうか?
目に見えにくく、人によって多様的な障害という点で、治療的な介入をどう展開していけばいいのか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか?

今回はこの高次脳機能障害に対しての作業療法のプロセスについて解説します。

高次脳機能障害に対してのOTアプローチの5つの区分

初期評価~最終評価までのプロセスは次の5つに区分されます。

作業療法準備期

これは担当ドクターから作業療法の依頼を受けたときから初回時面接までに位置します。
この時期では医学記録、ドクター、ナースといった病棟スタッフなどから情報収集、また脳損傷の状態とその程度の把握、現在の生活上での諸問題の確認をしておく必要があります。

また、診断から予想される障害の予測なども診療情報から収集しておくとなおよいかもしれません。

作業療法評価期

これは初回時面接から初期作業療法プログラム設定の期間に位置します。
この期間では作業行為でみられる諸問題、環境、クライアントの性格や病識、現状認識、主訴などを知ることが必要です。
各種神経心理学検査など紙面上の検査でスクリーニング的に機能障害をその原因系のおおよそを知っておく段階でもあります。

それをもとに作業療法目標を設定します。

初期治療期

治療を開始しつつ特定の問題をより詳しく調べ、高頻度で作業療法治療を行う時期に位置します。
評価期に行ったスクリーニング的な検査上で問題が上がった項目などは、この初期治療期に治療的アプローチとともにより詳しく行うのが望ましいです。
また治療を開始して約1ヶ月程度の期間が経過した段階(初期治療期の最終段階)で再評価を施行することで、初期評価時の問題群、目標、方法の妥当性と有効性についての判断を改めて下すことができます。
そしてその評価結果を基に作業療法プログラムの修正や訂正を行い、中期治療期に移行していきます。

ちなみにこの期間の治療はどうしても検査項目から見出された構成要素の問題にフォーカスした訓練が多くなってしまう傾向がありますが、あくまでクライアントが実際の生活で遭遇するであろう諸問題を念頭に置きながらOTアプローチを行う必要性があります。

中期治療期

初期治療プログラムの再評価が終了し、クライアントの問題を構造的にとらえられ、自己訓練や自己再学習の要領がつかめるようになる段階。
作業療法室での治療訓練や評価の頻度も少なくできる時期にあたります。
つまり、初期治療期で比重を占めていた構成要素に対しての機能的な治療訓練から、実際生活上の諸問題に対しての代償や適応促進、代理行動の獲得をさせる比重が高くなってくる時期とも言えます。

もちろん要素機能の改善の程度によっては継続して行う場合もあります。

終期治療期

なにかしらの欠陥機能は残っていますが、自己訓練や自己学習の仕方を模索したり、なんらかの役割を生活で見出しつつある場面で遭遇した諸問題へのアドバイスを受けながら、そのクライアントの人的・物理的環境下で潜在能力が発揮できるように調整する時期であり、生活適応期ともいえる時期です。
この時期は、中期治療期よりもよりそのクライアントの生活に沿った『環境設定』が必要な段階とも言えます。

復職を希望しているクライアントだったら、実際の元の職場にOTと訪問してデモンストレーションを行う…といったアプローチも必要かもしれません。

ただ、そういった場合は訓練的な介入よりも評価的な視点が必要な印象を受けます。
実際の現場で動作や活動を行い、なにかしらの『欠陥』や『やりづらさ』がある場合は、本人の能力に注目するよりも環境を設定することで解決できないかどうかを判断する発想が必要かもしれません。
そういった点でも、そのクライアントが担当OTの手を離れても変わらずに(もしくはそれ以上に)能力を発揮できるよう、しっかりと申し送りをしておく必要があります。

まとめ

上述したようなプロセスは高次脳機能障害に限らず身体機能における障害に対しても、認知症に対してもほぼ同様と言えると思います。
このプロセスをさらに体系化したものが近年協会が力を入れている『MTDLP(生活行為向上マネジメント)』なんでしょうね!

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