作業療法士による職業リハ、復職支援の現状と課題【私見多めです…】

就労支援や職業リハに関わっている作業療法士の人って、かなり少ないらしいです。
でもこれからの時代の流れを見ると、「働き方」ってテーマは非常に需要があるでしょうし、面白い分野だと思うんですけどね。

  • 働きたいけど働けない人
  • 治療と仕事を両立したい人
  • 働きたくないけど働かなきゃいけない人

…事情は様々ですが、「仕事をする」って作業を軸にしたリハビリって、将来はもっと伸びそうな気がします。

そこで今回は作業療法士による職業リハ、復職支援の現状と課題について、かなーり私見をまじえてまとめてみました(笑)

職業リハに関わる作業療法士の割合について

職業リハに関わる作業療法士の方って極端に少ないぞってことについて。

作業療法白書2015によると、医療領域でも身体障害領域に関わっている作業療法士は全体の47.3%、精神障害領域に関わっている割合が14.6%に対し、職業関連領域に関わっている割合が0.6%という結果がでています。

また医療(身体障害領域)の作業療法の指示内容において、就労(就学も含む)の指導、訓練を実施している割合については、全体回答数2020に対して142(7.0%)で、就労前訓練に至っては120(5.9%)との結果が確認できました。
ちなみに、就労移行支援事業所に勤務する作業療法士は、35名で全体の0.1%程度とのことです。
*作業療法白書2015における回答数(全会員数)34,109名を基にした割合。

この結果からみると、どうしても現段階での作業療法は医学的リハビリテーションの分野に傾倒してしまいがちなんでしょうね…。

職業リハは30年間立ち止まったまま?

今から27年も前の1990年のOTジャーナルに寄稿された『身体障害者に対する職業的アプローチ(内座 保弘)』という論文にも、

日本のリハビリテーションの発展のなかで、医学的リハビリテーションに対して、職業的リハビリテーションは立ち遅れている

という一文があります。

こうなるとこの約30年間、作業療法における職業リハビリテーションの進歩は“立ち止まっている”と言わざるを得ません。

職業リハがなぜ立ち止まっているのか?

では作業療法界における職業リハがなぜ立ち止まっているのか?についてですが…

  • 知識と想像力不足
  • ボトムアップアプローチへの依存
  • 医学的モデルへの依存
  • 体制上の問題

この4項目から考えてみます。

知識と想像力不足

まずは医療機関に勤務する作業療法士は、この職業リハに対しての知識、経験が圧倒的に足りないということがあげられます。
もちろん病院やクリニック勤務であれば単純に復職や就労支援が必要なクライアントの絶対数は多くないのかもしれません。

ただし、決して0ではないですし、「社会参加」を重視したICFの観点からすれば今後“就労”といった社会参加を課題にしたクライアントが増えていくことは確実です。
経験不足は知識で補えます。
そしてなによりも職業リハ的な介入をイメージする“想像力不足”によってせっかくの社会参加につなげる機会を見過ごしてしまっている場合が多いように感じます。

ボトムアップアプローチへの依存

「社会参加や復職とかは、まず身の回りのこと(ADL)が自立してからでしょ!」
…って同僚OTに言われたことがあります。

これはいまでも部分的にしか納得できていません(苦笑)。

社会参加を見据えた上で、トップダウン的なイメージでADL自立を促していくならわかるんです。

ボトムアップ的に「できないところをできるように改善する」というアプローチではどうしても足りないと思うんです。

「まずは自分で起きあがることができて、自分で座位が自立できて、歩行ができて、身の回りのこと(ADL)が自立して、家事(APDL)が自立して、その後就労(社会参加)を考えていきましょう」
…という発想なのか、

「半年後の復職のため、身の回りのこと(ADL)は自立できるようにしましょう、そのためにまずは自分で歩けるように、自分で起きて座れるようにしましょう!あ、家事(APDL)などはできる範囲で行い頼めるものは頼むようにしてもいいかもしれませんね!」
…という発想なのかによって、支援する作業療法士側も、支援されるクライアント側も「向かう方向」が変わってくると思うんです。

医学的モデルへの依存

前述したように現在の作業療法士の多くは医療機関での勤務が多いです。
“医療”の中での作業療法サービスの提供になっているため、どうしても医学的モデルを基礎にした発想や介入になってしまうのも無理はありません。

ただこれからの作業療法は「病院の外を向いた作業療法」であることが求められています。
これは医学的モデルというよりは社会的モデルの発想に近いのではないでしょうか?

そろそろ、機能訓練ばかりしているPT寄りのOTから脱却しないといけないのかもしれません。

体制上の問題

とはいっても、医療機関内での勤務、医療保険下でのサービス提供となると制限が関わってくることも事実です。
「点数が取れない」という理由だけで、入院中のクライアントの職場訪問ができない…ということも多くあります。
「外来でフォローするにも月1回だけでなかなか・・・」ということもあるようです。

職業リハが立ち止まっていると言われるのは、どうしてもこういった制度的な障壁が大きく関与しているのもあるのでしょうね。

まとめ

本記事では、作業療法士による職業リハ、復職支援の現状と課題について解説しました。

もしかしたら「職業リハ」という分野にとっては、作業療法士としての枠組みから多少離れるor広げる発想のほうがスムーズなのかもしれないな…なんても思います。
制度上の問題を考えると、医療保険、介護保険などではフォローしきれないのかもしれませんし。

ある意味新しい仕組み…モデルを作らないといけない分野なのかもしれませんね。

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