深部腱反射 – 定義・目的・種類・手順について

リハビリの臨床で深部腱反射の検査を行うことは頻繁にあります。
本記事では…

  • 深部腱反射の定義
  • 深部腱反射を評価する目的
  • 深部腱反射の手順
  • 深部腱反射の診断的意義

…について解説します。

深部腱反射とは?

深部腱反射とは、太い骨格筋につながる腱を筋が弛緩した状態で軽く伸ばしハンマーで叩くと、一瞬遅れて筋が不随意に収縮する反射を指します。
深部腱反射は、刺激に対して反射弓を通じて起こる自動的な筋収縮なので、筋肉を動かそうとする自発的な意志は不要になります。

深部腱反射を検査する目的とは?

では、リハビリテーションの臨床で深部腱反射を検査する目的、理由はなにがあげられるのでしょうか?

ここでは…

  • 障害部位の同定
  • 脊髄障害の高位診断
  • 反射の程度の評価
  • 反射の左右差やレベルの差の評価
  • 障害部位の推定
  • 筋緊張の程度の評価

…について解説します。

障害部位の同定

客観的な手技である深部腱反射は”障害部位の同定”に使用されます。
つまり、主に神経系の障害を特定するために用いられます。

脊髄障害の高位診断

また、深部腱反射は脊髄障害の高位診断に有用です。
深部腱反射によって脊髄のどのレベルに障害があるのか?に関する情報を収集することができます。

反射の程度の評価

個人差がありますが、深部腱反射の程度を評価することで、神経系の正常性や異常を判断することができます。

反射の左右差やレベルの差の評価

深部腱反射は、左右差やレベルの差を評価するためにも用いられます。
この左右差やレベルの差を見極めることは、病的な変化や障害の程度を把握するために重要になります。

障害部位の推定

深部腱反射の結果に基づいて、障害部位の推定が行われます。
病的反射の有無や感覚障害の分布などを参考にすることもあります。

筋緊張の程度の評価

深部腱反射は筋緊張の程度を判定するためにも使用されます。
筋緊張の増強や減弱がある場合にも評価されます。

深部腱反射の検査方法や手順

では、この深部腱反射の評価手順についてですが、次のようなものになります。

  1. 被検者は快適な姿勢にし、リラックスさせる。
  2. 検査は両側で行い、左右の反射の差を確認する。
  3. ハンマーを使用する際には一定の強さを保つ。検者の指を腱の上に置き、その上を叩くようにする。
  4. 腱に触れておくことで筋収縮を感じることができる。
  5. 腱反射を評価する際には、叩打する腱だけでなく、収縮を確認する筋肉も見えるようにする。
  6. 反射が減弱または消失している場合には、増強法を使用して反射の出現を確認する必要がある。

深部腱反射の種類と実施手順

深部腱反射には主に…

  • 上腕二頭筋反射
  • 上腕三頭筋反射
  • 腕橈骨筋反射
  • 室外腱反射
  • アキレス腱反射

…があります。
以下にそれぞれの実施手順について解説します。

上腕二頭筋反射

被検者は座位または背臥位で行います。
被検者の肘を60〜70°屈曲させ、大腿あるいは腹部の上にリラックスさせて乗せます。
検者は自身の母指を上腕二頭筋腱の上に置き、軽く圧迫を加えます。
検者はハンマーを使用して自身の母指を叩打します。
上腕二頭筋が収縮し、肘が屈曲するのを確認し、記録します。

上腕三頭筋反射

上腕三頭筋の腱反射も、被験者は座位または背臥位で行います。

座位の場合、被検者はリラックスした状態で座り、検肢の前腕を支えながら肘を60°屈曲します。
上腕三頭筋腱を叩打するため、肘頭の近位部をターゲットにします。

背臥位の場合、被検者は仰向けに寝かせ、検肢の手関節を軽く支えながら肘を屈曲位に保ちます。
この場合もやはり、上腕三頭筋腱を叩打するため肘頭の近位部をターゲットにします。

どちらの姿勢の場合も、上腕三頭筋腱を叩打することによって、上腕三頭筋が収縮し、肘が伸展する反射が起こるのを確認し、記録します。

腕橈骨筋反射

腕橈骨筋反射も、被験者は座位または背臥位で行います。

座位の場合、被検者は肘をやや屈曲させ、前腕は回内外中間位にします。
そのまま橈骨遠位端を叩打すると腕橈骨筋が収縮し、肘が屈曲するのを確認し記録します。
注意点ですが、橈骨遠位端付近は皮下組織が薄く、叩打により痛みを感じやすいです。
そのため検者の母指、あるいは示指、中指を叩打部分にそえて、その上を叩くことが必要です。

膝外腱反射

基本的に膝蓋腱反射は座位で行います。
座位姿勢のまま、膝蓋骨遠位部の腱を叩打します。
刺激により、大腿四頭筋が収縮し、膝が伸展するのを確認し、記録します。

もしも反射が出づらい場合は、後述する増強法を試してみます。

また、患者によっては座位姿勢が取れない場合は背臥位姿勢でも行うことができます。
この場合は被検者の膝の下に手を入れて持ち上げ、膝関節を約90°屈曲させます。

アキレス腱反射

アキレス腱反射は背臥位で行います。
股関節は軽度屈曲・外旋位にし、膝関節は屈曲位にします。
足関節は軽度背屈位にします。
その姿勢で、下腿三頭筋腱、つまりアキレス腱を直接叩打します。
ちなみにアキレス腱反射が亢進している場合、足底の足趾付近を叩打しても足関節が底屈するのが確認できます。

深部腱反射の増強法について

深部腱反射の増強法としては、Jendrassik法があります。
Jendrassik法では、被検者に両手を組んでもらい、強く左右に引っ張ったり、歯をかみしめたり、大声を出したり、眼を見開いたりするようにします。
これらの方法により、反射が出現しやすくなります。

深部腱反射の評定

反射の出現の程度は、消失から高度亢進までの6段階で判定されます

その他にも…

  • 著明な亢進(指で軽く叩くだけで反射が出現する)
  • 軽度亢進(病的とは限らない)
  • 正常
  • 軽度低下(病的とは限らない)
  • 著明に低下(反射増強法を用いてようやく反射を誘発できる)
  • 消失(反射増強法を用いても反射が出現しない)

…といった判定基準も存在します。

深部腱反射の診断的意義

深部腱反射は正常では出現するが、亢進している場合は上位の障害を考える必要があります。
ただし、反射の亢進は正常でも起こり得るため、単独では診断的な意義は少ないといえます。

つまり、全身の所見や他の反射や感覚検査の結果を総合的に判断することが重要になります。
ちなみに深部腱反射の亢進があり、同時に病的反射が陽性であれば、錐体路障害の可能性が疑われます。

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