リハビリテーションの場面では必ず何かしらの”疼痛”に対応しないといけません。
本記事では…
- 疼痛の定義
- 疼痛の種類
…について解説します。
疼痛の定義
疼痛とは、「実際の組織損傷や潜在的な組織損傷に関連し、またはそのような損傷に関連する言葉で表される不快な感覚や情動の体験」と定義されています(国際疼痛学会 IASP、1994)。
疼痛の種類
この疼痛ですが、大きく分けると主に…
- 急性痛
- 慢性痛
…になります。
急性痛
急性痛とは、実際の組織損傷や腫れを引き起こしているけがや病気の結果を指します。
この急性痛は、生体内で生じた異常の警告サインであり、防御反応になります。
急性痛が発生すると、それに立ち向かうために交感神経・副腎皮質系の働きが活発になり、闘争・逃走本能を活性化するアドレナリンが大量に分泌されます。
これは動物としての本能的な反応で、敵と遭遇したときに「戦うべきか、逃げるべきか」をすばやく判断することが求められるからのようです。
慢性痛
慢性痛とは、3ヶ月以上続く持続的または断続的な痛みを指します。
急性痛とは異なり、痛みが組織の損傷程度と釣り合っていないものを指します。
慢性痛は、神経障害性疼痛、中枢性疼痛、心因性疼痛などのタイプがあり、それぞれ原因が異なります。
疼痛に伴う多面的な要素
上記の種類に加え、疼痛には次のような要素を有しているのも特徴になります。
- 感覚
- 情動
- 認知
以下にそれぞれ解説します。
感覚
疼痛の感覚的な側面についてですが、体内や体表に存在する特定の受容器が外部からの刺激や組織損傷に反応し、神経信号として脳に送られることで生じます。
感覚的な要素では、疼痛の強さ、場所、広がり、刺すような感じやズキズキする感覚など、身体的な感じ方が重要です。
これは、神経系の中枢からの情報処理によって生じるものであり、個人差も存在します。
情動
また、疼痛は不快な感覚体験であり感情的な要素も含まれます。
疼痛によって引き起こされる感情的な反応は個人によって異なり、苦痛、不安、怒り、絶望などの感情が現れることがあります。
これは、脳の情動制御回路が関与し、疼痛が心理的な影響を与えることを示しています。
この感情的な側面は、疼痛の体験をより豊かにし、生活の質に大きな影響を与える要素です。
認知
そして疼痛は認知的な要素も持ちます。
これには、疼痛の意味や理解、痛みの原因の特定、疼痛の予測や将来の影響に関する思考が含まれます。
個人は疼痛に対して異なる認知的な対処方法を持ち、痛みに関する信念や期待が体験に影響を与えることがあります。
また、認知的な側面は、疼痛への対処や痛みの管理において重要な要素であり、心理的なアプローチや認知行動療法(CBT)などが有効とされています。
疼痛はこれらの要素の組み合わせによって個別に体験され、相互に影響しあっています。
感覚、情動、認知は疼痛の多面性を反映し、痛みへの対処や治療のアプローチを総合的に考える必要があります。