疼痛の主観的評価の一つに”視覚的アナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)”が挙げられます。
これは疼痛強度の評価になりますが、本記事では、このVASについて解説します。
VASとは?
視覚的アナログスケール(VAS)は、痛みの強度を直線上にプロットする疼痛評価方法です。
被験者は10cmの直線上に自身の痛みの程度を示し、その長さによって痛みの強度が数値化されます。VASは簡単な使用方法と感度の高さが特徴であり、急性期の痛み評価において信頼性が高いとされています。
疾患や治療効果の評価、研究における痛みの測定など幅広い場面で応用されています。
被験者の主観的な痛みの評価を取り入れることで、個々の痛みの経験や感じ方を捉えることができ、疼痛評価と治療効果のモニタリングに役立ちます。
VASの特徴
VAS(視覚的アナログスケール)の特徴はまず、簡単な使用方法があり、被験者が直感的に自身の痛みの程度を表現できる点があげられます。
また、感度が高く、微細な痛みの変化も捉えることができます。
このVASは広く使用されており、様々な臨床や研究で応用されています。
さらに、急性期の痛み評価において信頼性が高く、痛みの強度を数値化するため、客観的なデータとして利用できます。
ただし、慢性痛の評価では痛みの記入点が一定せず、信頼性が低くなる場合もある点には注意が必要です。
VASの使い方と評価方法
VASでは、10cmの直線を用いて痛みの程度を評価します。
被験者は左端(0cm)を「痛みなし」、右端(10cm)を「最悪の痛み」とし、現在の痛みの程度を直線上に示します。
その長さが痛みの強度として評価されます。
VASの適用範囲と応用例
VASは様々な臨床で使用されています。
痛みの評価における一般的な手法であり、疾患や治療効果の評価、研究における痛みの測定などに応用されます。
VASのメリット、利点など
では、臨床でVASを使用するメリットとは何があげられるでしょうか?
以下に解説します。
簡単な使用方法
VASは直線上に印をつけるだけのシンプルな方法であり、被験者が直感的に痛みの程度を表現できます。
感度の高さ
VASは微細な痛みの変化も捉えることができ、痛みの強度をより詳細に数値化できます。
広範な応用
VASは様々な臨床や研究で広く使用されており、痛みの評価や治療効果のモニタリングに役立ちます。
急性期評価の信頼性
VASは急性期の痛み評価において信頼性が高いとされています。
VASのデメリットについて
では逆に、VASを使用することで想定されるデメリットとはなにがあげられるでしょうか?
慢性痛評価の限界
VASは慢性痛の評価において痛みの記入点が一定せず、信頼性が低くなる場合があります。
被験者の主観性に影響を受ける
VASは被験者自身の主観的な痛みの評価に依存するため、被験者の個人差や心理的要因が結果に影響を与えることがあります。
評価の解釈の課題
VASの結果を解釈する際に、被験者の痛みの捉え方やスケールの使用方法のバイアスを考慮する必要があります。
VASを活用した疼痛評価の重要性
VASは疼痛評価において重要なツールであり、患者の痛みの主観的な評価を取り入れることで、疼痛の評価と治療効果のモニタリングが可能になります。
VASの信頼性と妥当性の評価
VASの信頼性や妥当性は様々な研究で評価されています。
理学療法診療ガイドラインでは以下のように記されています。
VASの再現性は、5分間のインターバルでは0.99、24時間のインターバルでは0.97の相関係数が報告されている。
6段階の侵害熱刺激による実験では、VASの妥当性も示されている。
これらの結果から、VASは痛みの強度評価に有用であると考えられる。
ただし、慢性痛患者においてVASに正確に回答できない割合は11%であり、Numerical Rating Scale(NRS)の2%、Verbal Rating Scale(VRS)の0%と比べて高いと報告されているため、注意が必要である。
このように再現性や一貫性の高さが求められますが、被験者の主観的な要素や心理的な影響も考慮する必要があります。
VASの利用における注意点と解釈の課題
VASの利用には注意が必要です。
高齢者や小児、視力の低い被験者への適用が難しい場合もあります。
また、被験者の解釈や評価のバイアスにも注意が必要です。
VASとNRSとの違いについて
VASの他にも、臨床では口頭で痛みの評価を行う数値評価スケール(NRS)があります。
VASとNRSの違いについてですが、両者は痛みの程度を被験者の主観に基づいてスコア化する点で共通しています。
しかし、異なる点も存在します。
VASでは100mmの線分上に印をつける作業が必要ですが、NRSでは特に準備物も必要なく口頭で実施されます。
そのため、NRSの方がより簡潔に実施できるとされ、臨床現場ではNRSの使用が一般的です。
さらに、NRSとVASの間には相関関係がありますが、報告によれば、慢性痛の被験者が正確に回答できない割合を考慮すると、以下の統計結果があります。
- VAS:11%
- NRS:2%
これにより、NRSの方が正確性が高いと言えます。
ただし、統計結果は一般的な傾向を示しており、個々の状況によって異なる可能性もあります。
以上のように、VASとNRSは痛みの評価において共通点と異なる点を持ち、NRSは正確性の面で有利な特性を持つと言えます。