ユニバーサルデザインとは?【7原則・例・バリアフリーとの違いについて】

バリアフリーとユニバーサルデザインの意味が同じ…と考えている人も多いようですが、実は大きく違います。
クライアントの生活をしっかり支援するためにも、それぞれの意味と違いについては理解しておかなければなりません!

本記事ではこのユニバーサルデザインの基本である7原則と実際の例、そしてバリアフリーとの違いについて解説します。

ユニバーサルデザインとは?

そもそもこのユニバーサルデザインとは、1985年にアメリカのノースカロライナ州立大学(NCSU)のロン・メイス(Ronald L.Mace)による

「あらゆる建築物や製品は設計の当初から誰でも利用できるように最大限の努力をはらって設計すべきである」

…と公式に提唱したことがはじまりとされています。

このロン・メイス氏は9歳の時にポリオを発症して以来、酸素吸入と電動車いすを使用しての生活を送っていました。
それまでの建築や製品の設計において、何かしらの障害を持つ人も利用するという意識や配慮は、設計の最終的な段階で補完的に加味される程度だったようです。

だからこそ”後付けの配慮”に対して非常に不満を持っていたのかもしれません。

ユニバーサルデザインの7原則について

とはいっても、様々な障害やその人個人のライフスタイルもあるので、ユニバーサルデザイン、という考え方にも基準や原則が必要です。
そこでロン・メイス氏はノースカロライナ州立大学内にユニバーサルデザインセンター(CUD)を開設し、次の7つの原則を定めました。

  • 公平性
  • 自由度
  • 単純性
  • 明確さ
  • 安全性
  • 持続性
  • 空間性

以下にそれぞれ詳しく解説します。

公平性

1つ目は「どんな人でも公平に使えること」です。
公平な利用(Equitable use)という言葉でも表されており、どんな人でも公平に利用できるという原則になります。

例としては、自動ドアなどがあげられます。

自由度

2つ目は、「使う上での柔軟性があること」があげられます。
自由度が高く使いやすい方を選んで利用できるという、柔軟性(Flexibility in use)が高いという原則になります。

例としては2段の高さの手すりなとがあげられます。

単純性

3つ目は、使い方が簡単で自明であることです。
つまり、単純で直感的な利用(Simple and intuitive)が可能という原則になります。

例としては、さわるだけで区別できるシャンプーとリンスのヘッドの凹凸などがあげられます。

明確さ

4つ目は、必要な情報がすぐに分かることです。
つまり、すぐに認知できる情報(Perceptible information)という原則になります。

例としては、ピクトグラムなどがあげられます。

安全性

5つ目は、うっかりミスや重大な事故につながらないような工夫をされていることです。
ある種の失敗に対する寛大さ(Tolerance for error)が備わっているという原則です。

例としては、電子レンジを使用中でも蓋を開けると自動的にストップされる…といった機能です。

持続性

6つ目は、身体への過度な負担を必要としないで使用が可能なことです。
少ない身体的な努力(Low physical effort)で利用が可能という原則になります。

例として、自動販売機のボタン(押しやすく、低い位置に設置)

空間性

7つ目は、アクセスや利用のための十分な大きさと空間が確保されていることです。
接近や利用のためのサイズと空間(Size and space for approach and use)と表現される原則になります。

例としては、公共施設のスロープなどがあげられます。

身近にあるユニバーサルデザインの具体例

では、このユニバーサルデザインについて主な事例を一部ご紹介します!

シャンプーorリンス

シャンプーボトルの側面にギザギザの”きざみ”があること、知ってますか?
もともとは視覚障害のある方がシャンプーとリンスを区別しやすいように考えられた方法です。

ただ視覚障害がない健常者の人でも、洗髪をするときは多くの人が目を閉じて使用することからこのユニバーサルデザインとしての工夫は非常に便利なものになります。

ななめドラム洗濯乾燥機

背の高い人だけでなく小柄な人や腰が曲がってしまうお年寄り、子どもや車椅子の人でも誰でも、洗濯物の出し入れが楽なデザインになっています。
このドラム式洗濯乾燥機“NA-VX7300L-W”は2014年のユニバーサルデザイン賞を受賞しているようです。

ピクトグラム

必要な情報を図案化することで、言語に頼らなくても情報を伝えることができます。
背景とイラスト・文字とのコントラストが大きく、見やすいのも特徴です。

ユニバーサルデザインとバリアフリーとの違いは?

冒頭の疑問点に戻りますが、ユニバーサルデザインとバリアフリー、どちらも似たような意味に捉えられますので同じ意味のように思われ、実際同じような意味で使われている場面も多くみられます。
しかし、それぞれ定義の上でも目的と対象に大きな違いがあります。

  • バリアフリー:対象が高齢者や障害者といった特定の人であり、それらの人が快適に生活できるように障壁(バリア)をなくすことを目的としている
  • ユニバーサルデザイン:対象は国籍や年齢、性別、障害の有無に関係なく、すべての人ができるだけ使いやすいようにするのが目的としている

バリアフリーの対象やその目的は高齢者や障害者といったように限定的に扱われるのに対して、ユニバーサルデザインの対象や目的は障害の有無を超えた“すべての人”になります。

バリアフリーとユニバーサルデザインの違いの具体例

  • 階段とは”別に”スロープを設置→「バリアフリー」
  • 手動の開き戸とは”別に”自動ドアを設置→「バリアフリー」
  • “初めから”階段や段差を作らずに平らにする→「ユニバーサルデザイン」
  • 戸は”初めから”全て自動ドアのように誰でも開閉しやすいものにする→「ユニバーサルデザイン」

引用:福津市ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインの方が優れている??

このようにまとめていくと「初めからすべての人が使えるように工夫されている!」という点で、バリアフリーよりもユニバーサルデザインの方が優れているように感じます(苦笑)。
事実、一般的にはバリアフリーを一歩進めた考え方=ユニバーサルデザインと言われているようです。

しかし基本的にこの2つの考え方にどちらが優秀か?といった優劣はなく、お互いがカバーし合うような”共存関係”であると捉えたほうがよいようですね。

コクヨ×ユニバーサルデザイン

この記事を執筆するにあたり、ユニバーサルデザインについて改めて調べているとどうやら文具メーカーである“コクヨ”が非常にユニバーサルデザインに力を入れていることがわかりました。

コクヨの公式サイトでは以下のような文言が掲載されています。

ロン・メイス博士は、ユニバーサルデザインの7原則を、製品そのものだけでなく、生活環境や、コミュニケーションなど、さまざまな場面にはば広く取り入れるように訴えました。
「ロン・メイスの7原則」にコクヨも大いに賛同し、コクヨ独自の開発要件や、それを評価するプログラムを作り、日々の製品開発に取り組んでいます。
引用:コクヨ公式サイト

コクヨの経営理念自体にロン・メイス氏が提唱するユニバーサルデザインの7原則を取り入れ、製品開発に取り組んでいることがわかります。
「(初めから)すべての人に使いやすいように」という考えであるユニバーサルデザインは、これからの企業には重要な視点なのかもしれませんね!

まとめ

今回はユニバーサルデザインの基本である7原則と実際の例、そしてバリアフリーとの違いについて解説しました。

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは、“初めから”すべての人が使うことを想定しているか、“後から別に”特定の人も使えるようにカスタマイズしているか…という点になります。
ただこの二つの考え方に優劣はなく、どちらも高齢者や障害を持つ方も生活しやすくするためには必要な概念と言えますね。

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