CHART日本語版(CHART-J)- 評価対象・目的・方法について

検査

IADL、APDLを評価するための方法にCHARTも広く利用されています。
今回はこのCHART日本語版の方法と解釈について解説します。


CHARTについて

CHART(Craig Handicap Assessment and Reporting Technique)はアメリカコロラド州のクレッグ病院のGale Whiteneck氏らにより1992年に当時の国際障害者分類のICIDHにおける社会的不利を測定するツールとして開発されたようです。
最初は身体的自立、移動、作業、社会的統合、経済的自立の5つの領域を測定するものでしたが、1996年に改訂が加わり6領域で構成されるようになりました。

また、日本語版(CHART-J)は初版が青柳らによって、改定版が熊本らによって翻訳、発表されています。

対象と目的

元々は脊髄損傷といった身体障害領域の対象者を想定して作られています。
セルフケアからIADL、作業や社会統合、経済的自由といった「社会的不利(ハンディキャップ)」という点の評価を目的としています。

評価方法について

以下にCHARTによる6つの領域である…

  • 身体的自立
  • 認知的自立
  • 移動
  • 作業
  • 社会的統合
  • 経済的自立

…における質問項目の詳細を説明します。

身体的自立

(1)毎日食事、入浴、トイレ、着替え、移動などの動作をする際に他の人に何時間ぐらい助けてもらっていますか?

ヘルパーやボランティアによる援助:(Pl-a)時間
家族による援助:(Pl-b)時間
助けは必要ない

(2)前述した毎日のケアを除いて、日用品の買い物、炊事、洗濯、掃除などを月に何時間くらい助けてもらっていますか?

月(Pl-c)時間
助けは必要ない

(3)家で何時間ぐらいカテーテルの交換、褥瘡の処理といった看護師や医師による処理を受けていますか?

月(Pl-d)時間
処置を受けていない

(4)訪問に来ている付き添い人や介護人には誰が指示を出していますか?

1:自分
2:自分以外の人
3:付き添いや介護をしてもらっていない

答え:(Pl-e)

認知的自立

(5)物忘れやどうしたらよいかわからなくなるため、家に一人でいることが難しくほかの人に助けてもらうことがありますか?

1:いつもは他人の世話にならずに一人で過ごしています
2:普段は1日中、一人でいますが、ときどき話しかけてくれる人がいます
3:時には1日中一人で過ごすことがあります
4:時には1~2時間、一人で過ごすことがあります
5:世話をしてくれる人はいつも近くにいてときどき様子を見に来てくれます
6:いつでも世話をしてくれる人と一緒にいます

答え:(Cl-a)

(6)外出の時に物忘れやどうしたらよいかわからなくなるため、他の人の助けがどのくらい必要になりますか?

1:どこへ行くにも人の助けは必要ありません
2:慣れたところであれば、一人で外出できます
3:世話をしてくれる人と一緒でないと外出できません
4:誰かと一緒でも外出させてもらえません

答え:(Cl-b)

(7)他の人と話をしていて、通じにくいと感じることがありますか?

1:いつも感じます
2:時々感じます
3:ほとんど感じません

答え:(Cl-c)

(8)しなくてはならない大事なことを思い出せないことがありますか?

1:よくあります
2:ときどきあります
3:ありません

答え:(Cl-d)

(9)自分でお金の使い方を決めていますか?

1:すべて自分で決めています
2:重大なお金を使い方以外は自分で決めています
3:その都度、必要なお金だけもらっています
4:自分でお金を持つことはありません

答え:(Cl-e)

移動

(10)普段一日に何時間くらい床(とこ)から出てきて起きていますか?
答え:(M-a)時間

(11)普段1週間に何日くらい外出しますか?
答え:(M-b)日

(12)ここ1年間で何日くらい外泊しましたか?(入院は除く)

1:なし
2:1~2日
3:3~4日
4:5日以上

答え:(M-c)

(13)家の出入りに誰かの助けがいりますか?

1:必要です
2:必要ありません

答え:(M-d)

(14)ご家庭で一人で寝室、台所、ふろ場などに行くことがありますか?

1:できます
2:できません

答え:(M-e)

(15)一人で乗り物を利用しできますか?(自動車を含む)

1:できます
2:できません
[
答え:(M-f)

(16)その乗り物で好きなところに行けますか?

1:行けます
2:行けません

答え:(M-g)

(17)その乗り物をいつでも使うことができますか?

1:できます
2:できません

答え:(M-h)

(18)その乗り物をあらかじめ手配しなくても使えますか?

1:使えます
2:使えません

答え:(M-l)

作業

(19)働いてお金をもらっていますか?

1:はい→1週間に何時間くらいですか?(O-a)時間
2:いいえ

(20)大学や専門学校、または職業訓練を受けるなどのことをしていますか?

1:はい→1週間に何時間くらいですか?(予習復習を含む)(O-b)時間
2:いいえ

(21)炊事、洗濯、掃除などの家事や子育てなどのご家庭の仕事をしていますか?

1:はい→1週間に何時間くらいですか?(O-c)時間
2:いいえ

(22)庭仕事や家の手入れをしていますか?

1:はい→1週間に何時間くらいですか?(O-d)時間
2:いいえ

(23)ボランティア活動に継続して参加していますか?

1:はい→1週間に何時間くらいですか?(O-e)時間
2:いいえ

(24)スポーツ、運動、囲碁将棋、映画鑑賞などのレクリエーションをしていますか?(TVは含まず)

1:はい→1週間に何時間くらいですか?(O-f)時間
2:いいえ

(25)その他の趣味や読書のような時間を過ごしていますか?

1:はい→1週間に何時間くらいですか?(O-g)時間
2:いいえ

社会的統合

(26)1人で暮らしていますか?

1:一人暮らしです
2:一人暮らしではありません

*1の場合はそのまま27の質問へ
(26a)ご夫婦で暮らしていますか?

1:はい 
2:いいえ

答え:(Sl-a)
(26b)一緒にお住いのご家族は何人ですか?
答え:(Sl-b)人

(26c)住み込みの付き添い人は何人いますか?
答え:(Sl-c)人

(26d)そのほかに同居している人は何人いますか?
答え:(Sl-d)人

(27)結婚していない方の場合、恋人はいますか?

1:います
2:いません

答え:(Sl-e)人

(28)月に1回以上、訪問したり、電話をしたり、手紙を書くなどの付き合いをしている親戚の方はいますか?

1:いる・・・(Sl-f)人
2:いない

(29)月に1回以上、訪問したり、電話をしたり、手紙を書くなどの付き合いをしている仕事仲間や町内会の方はいますか?

1:いる・・・(Sl-g)人
2:いない

(30)月に1回以上、訪問したり、電話をしたり、手紙を書くなどの付き合いをしている友人や知り合いの方はいますか?

1:いる・・・(Sl-h)人
2:いない

(31)過去1か月間に面識のない人に自分から話しかけたことがありましたか?

1:なし
2:2~3回
3:3~5回
4:6回以上

答え:(Sl-i)

経済的自立

(32)同居している家族全体の収入は1年間でだいたいどのくらいですか?
*給料、障害年金や手当、年金や恩給、家賃収入や不労所得といったものも含む

1:100万円以下
2:101~250万円
3:251~400万円
4:401~550万円
5:551万円以上

答え:(Cs-a)

採点方法

ではそれぞれの項目別に採点方法について解説します。

身体的自立

手順1:まず、(Pl-a)+(Pl-b)+(Pl-c)/30+(Pl-d)/30 の式で(Pl-x)を算出
手順2:(Pl-e)の答えが「2」の場合は(Pl-x)×4で(Pl-y)を算出
   (Pl-e)の答えが「1or3」ならば(Pl-x)×3で(Pl-y)を算出
手順3:最後に100-(Pl-y)の答えが、身体的自立の得点になります。

認知的自立

認知的自立の得点の算出方法は、選択肢の番号を得点として扱い、次の公式に当てはめて計算します。
つまり、、、
[6-(Cl-a)]×8+[4-(Cl-b)]×8+[(Cl-c)-1]×6+[(Cl-d)-1]×6+[4-(Cl-e)]×4の答えが、認知的自立の得点になります

移動

移動の得点の算出方法は、
手順1:(M-a)×2+(M-b)×5+[(M-d)-1]×5+[2-(M-e)]×5+[2-(M-f)]×5+[2-(M-g)]×5+[2-(M-h)]×5+[2-(M-i)]×5の式で(M-x)を計算します。
手順2:(M-c)=1なら(M-y)=0
    (M-c)>1なら(M-y)=(M-c)×5
    の式で(M-y)を算出します。
手順3:最後に(M-x)+(M-y)の答えが、移動の得点になります。

作業

作業の得点の算出方法は、
(O-a)×2+(O-b)×2+(O-c)×2+(O-d)×2+(O-e)×2+(O-f)×2+(O-g)×2の答えが作業の点数になります。

社会的統合

社会的統合の点数の算出方法ですが、、、
(Sl-a)=1の場合は(Sl-r)=30
(Sl-a)=2 で、さらに(Sl-c)もしくは(Sl-d)≧1なら(Sl-r)=20
(Sl-a)=2かつ(Sl-e)=1ならば、(Sl-s)=20
(Sl-r)>0かつ(Sl-e)=1ならば、(Sl-s)=30-(Sl-r)
(Sl-t)=[(Sl-b)+(Sl-f)]×5 ただし Sl≦25
(Sl-c)>1ならば(Sl-u)=(Sl-c)-1  (Sl-c)≦1ならば(Sl-u)=0
(Sl-x)=[(Sl-g)+(Sl-u)]×2 ただし (Sl-x)≦20
(Sl-d)>1ならば(Sl-v)=(Sl-d)-1 (Sl-d)≦1ならば(Sl-v)=0
(Sl-y)=[(Sl-h)+(Sl-v)]×10 ただし (Sl-y)≦50
(Sl-i)=1ならば(Sl-z)=0
(Sl-i)>1ならば(Sl-z)=(Sl-i)×5
最後に、(Sl-r)+(Sl-s)+(Sl-t)+(Sl-x)+(Sl-y)+(Sl-z)の合計得点が社会的統合の得点になります。

経済的自立

経済的自立の得点の算出方法は、
[(Cs-a)-1]×25 で計算できます。
*すべての領域得点で100点を超える点数が算出された場合は、得点を100点とする、という注意もあるようです。

ICIDHの社会的不利(ハンディキャップ)にフォーカスして評価する方法がこのCHART日本語版になるんだね!
このCHARTを使用することでクライアントが社会生活を送る上での障壁を探すこともできますね!

関連文献

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